2007年のUAPレポート
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2007年12月20日発行
親族への土地の譲渡が相続税評価額で可能に?~平成19年8月23日判決より~
1.親族等へ土地の譲渡は「時価」が原則
親族等へ土地を譲渡する際には、相続税評価額ではなく時価によることとされています。これは、所謂負担付贈与通達により、「土地(中略)のうち、負担付贈与又は個人間の対価を伴う取引により取得したものの価額は、当該取得時における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。」との定めがあり、時価を下回る価額で譲渡した場合において「実質的に贈与を受けたと認められる金額がある」とされたときは、当該価額は「著しく低い価額」(相続税法7,9)に当たるとされ通常の取引価額(時価)との差額を贈与により取得したとみなされるためです。
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2007年12月20日発行
株価対策の配当時期に要注意~定時株主総会で配当決議しても直前事業年度の配当金額として取り扱われません~
富裕層の資産保有会社は、巨額の純資産価額にかかわらず、利益は赤字基調のため、配当もしておらず、財産評価基本通達における株式評価上比準要素数1の会社(類似業種比準価額を25%しかミックスできない。)とされ、評価額が割高になっている場合が往々にしてあります。
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2007年11月28日発行
GCAの「三角株式移転」を用いた経営統合
東証マザーズ上場のM&AアドバイザリーファームであるGCAホールディングス株式会社(以下「GCAH社」といいます。)は、去る平成19年11月1日、「三角株式移転」を用いて米国カリフォルニア州に本社のあるSavvian,LLC.(以下「Savvian LLC」といいます。)との間で経営統合をすることを同社の取締役会で決定したことを発表しました。
Savvian LLCはGCAH社と同様にM&Aのアドバイザリー業務を行う独立系投資銀行で、GCAH社はこの経営統合により、クロスボーダーM&Aの取り扱い件数を増加できる体制を整え、海外案件の比率を高めていくことを目指すとしています。
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2007年11月28日発行
親会社株式の取得に係る課税関係が三角合併の障害に
平成19年5月1日から解禁された三角合併は、もっぱら外国企業である親会社の株式を対価として国内企業を買収する場合に用いられることが想定されている制度ですが、国内企業が三角合併を活用するメリットも存在します。
代表的な活用場面は、国内親会社Aが適格分社型分割によって創設された100%子会社Bにグループ外会社であるC社を吸収合併させる場合で、今後も組織再編等が予想される企業グループが利用するケースです。
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2007年10月25日発行
不動産流動化スキームに与える信託損失の影響
平成19年度税制改正で、信託法の改正に伴い、法人が受益者である場合の信託損失の損金算入に関する制限規定が設けられました。具体的には、法人が受益者である信託が受益者等課税信託に該当する場合で、「①受益者が直接に信託債務を負担するものでない場合」には、信託損失のうち調整信託金額を超過する部分が損金不算入となりました。また、「②信託財産に帰せられる損益が実質的に欠損とならないと見込まれる場合」には、信託損失が全額損金不算入となりました。
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2007年10月25日発行
適格機関投資家の範囲拡大はTMKスキームには適用せず~租税特別措置法施行規則の改正より~
財務省は平成19年9月27日付にて租税特別措置法施行規則等の一部を改正する省令を公布しました。これによりますと、TMKスキームにおけるペイスルー要件に係る適格機関投資家の範囲は、金融商品取引法において拡大された適格機関投資家の範囲ではなく、租税特別措置法施行規則第22条の18の4に規定する範囲に限られることが分かりました。租税特別措置法施行規則第22条の18の4に規定する適格機関投資家の範囲(抜粋)は下記の通りです。
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2007年9月26日発行
不動産流動化に特定受益証券発行信託を利用することで消費税が有利に?
平成19年9月30日に施行される改正信託法では新たな信託として受益証券発行信託が定められました。これまで、貸付信託、投資信託及び特定目的信託に限られていた受益権の証券化が一般に認められるようになっています。
受益証券発行信託の中でも税務上一定の要件に該当する者を受託者とし、過度な繰延べが生じない信託として一定の信託を「特定受益証券発行信託」としていますが、この「特定受益証券発行信託」を不動産の流動化スキームに応用した場合に、消費税が有利になるケースがありそうです。
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2007年9月26日発行
「後継ぎ遺贈型の受益者連続信託」の代わりとして注目される「負担付遺贈」
資産家の方に多い悩みに、「自分の財産を誰に承継させるかを自分で決めたい、できれば、次の次に承継する人まで決めておきたい。」ということがあります。
例えば、①まずは長年連れ添った配偶者に財産1億を渡して生活の保障をし、配偶者が死んだ後は配偶者が費消した5千万を差し引いたその残り5千万を自立している長男にではなく病気がちの長女に渡したいという願いや、②自社株について次の事業承継者である長男に渡し、長男の後は優秀な次男の子供に引き継がせたいというものです。
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2007年8月29日発行
建物を税務上有利に転売するための消費税簡易課税の選択
~不動産譲渡が第一種事業(卸売業)に当たるとされ、事業者にとって有利なみなし仕入率90%が適用された事例(平成18年12月13日裁決より)~
1.現行実務の取り扱い
SPCの不動産を売却する事業年度については、しばしば簡易課税制度を選択し、申告・納付を行います。原則課税の場合に比べ、納税額が少なくなるためです。(下記数値例参照)
前提
建物売上: 10億円
売却手数料等: 3000万円原則課税の場合の納税額
10億円×5% ー 3000万円×5% = 4,850万円簡易課税制度を選択した場合の納税額
10億円×5% ー 10億円×5%×60%=10億円×5%×(1-60%)=2,000万円
みなし仕入率
上記のように、簡易課税制度を選択した場合の消費税額は、課税売上高の5%に(1-みなし仕入率)を乗じた金額になります。したがって、みなし仕入率が大きければ大きいほど、消費税の納税額は少なくてすみます。 -
2007年8月29日発行
中間法人に対する基金拠出も集団投資スキーム持分と認定される可能あり~金商法パブコメに対する金融庁の考え方より~
金融庁は平成19年7月31日付にて「金融商品取引法制に関する政令案・内閣府令案等」に対するパブリックコメントの結果等を公表しました。
この中で倒産隔離性を実現することを目的とする有限責任中間法人に対する基金拠出に係る権利について、「集団投資スキーム持分」から一律に除外されるものではないことを明確にしました。
有限責任中間法人に関しては、残余財産分配を通じて収益を還元することが可能であり、投資ビークルとして活用される可能性があるためと説明されています。
これにより、合同会社等の社員権等を有する既存案件の有限責任中間法人については、原則として「投資運用業」の登録が必要になります。 -
2007年7月31日発行
相続税における信託課税の改正~平成19年度税制改正より
平成18年12月に成立し、平成19年9月にも施行予定の改正信託法では新しい類型の信託制度が導入されており、相続においても信託の利用機会の増加が期待されます。そこで気になるのは新しい信託制度に対する課税関係です。
これまで、信託に関する課税は、名目上の信託財産の所有者である受託者ではなく、実質上の所有者である受益者にその所得や利益が帰属するものとして課税をする受益者課税が原則とされてきました。
ところが、新たに導入される信託制度では、単純に受益者に課税関係を帰属させるというやり方だけでは十分に課税がなされない恐れのある信託の設定が可能になりました。
そこで、平成19年度の税制改正では、受益者課税の原則は維持しながらも、受益者課税だけでは課税しきれない信託制度については、所得税、法人税、相続税などの各種の税目を横断的に、かつ、一体的なものとして整備することにより租税回避を防止する措置をとっています。
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2007年7月31日発行
自社株式80%評価減の衝撃
平成19年6月29日に、中小企業庁が設立した事業承継協議会から、事業承継税制検討委員会中間報告が公表され、我が国の事業承継税制に大きな変革をもたらす制度の提案が行われました。
すなわち、非上場株式の80%減免特例制度の創設です。
現行税制では、事業用資産の特例措置として、小規模宅地の評価減制度(事業用宅地であれば原則として80%の評価減)と非上場自社株式の10%評価減制度があります。後者の非上場自社株式の評価減は、その評価減額の上限等の制限が厳しく、あまり活用されていませんでした。
今回の中間報告では、非上場株式について広く80%の評価減を認めるよう提言されています。
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2007年6月25日発行
定期同額給与「どこまで認められるのか、臨時改定事由」
役員給与については、法人税法上の取扱いが、平成18年改正において大幅に見直されました。そして、国税庁の平成18年12月付け質疑応答事例(以下、「Q&A」という。)が公開された後、これを条文に落とし込むかたちで、平成19年改正が行われました。
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2007年6月25日発行
金融商品取引法の施行で再注目されるTMKスキーム~早ければ2007年9月にも本格施行~
2006年6月に成立した金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)は、早ければ2007年9月にも本格施行と言われ、不動産投資スキーム及び不動産業界に多大な影響を及ぼすことが予想されています。以下いわゆるTKスキームの運用に係る規制について検討します。
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2007年5月25日発行
適格合併等と相続開始前3年以内取得土地等の評価
組織再編法制や同税制が整備されたため、非上場会社であっても、事業承継をはじめとする様々な目的のために合併や分割が利用されることが多くなってきています。
これら合併等は適格合併等で行われることが通常ですが、その効果は、移転する資産が簿価で引継がれることです。
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2007年5月25日発行
平成19年度税制改正を受けて減価償却に関する当面の監査上の取扱いが公表されました
既報の通り、平成19年度税制改正において減価償却費の損金算入限度額の規定が大幅に改正されました(UAPレポート:2月22日)。この改正を受けて、平成19年4月25日、日本公認会計士協会から「監査・保証実務委員会報告第81号 減価償却に関する当面の監査上の取扱い(以下、「本件報告」という。)」が、減価償却項目に関連する今後の会計処理の監査についての新たな実務指針として公表されました。
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2007年4月25日発行
オーナー社長が第三者株主から自社株を購入した場合にみなし贈与課税 ~実務への影響大きい平成19年1月31日東京地裁判決~
オーナーが従業員などの同族関係者以外の個人から自社株を原則的評価額よりも相当程度低い価額で購入することは実務上よく行われています。当該取引が行われた場合には、条文を字面通り読むと相続税法第7条の対象となり、原則的評価額と譲渡価額との差額について、譲受者に贈与税が課税される理屈になります。ところが、同族間取引ならいざしらず、第三者間取引の場合には、相続税回避目的で取引が行われる場合などを除き、実務上は贈与税課税されない、というのが一般的な理解だったと思います。
ところが、東京地方裁判所は平成19年1月31日、代表取締役でもある創業者オーナーが合計116名の同族関係にない第三者株主から自社株を原則的評価額の5.7%ないし21.8%で購入した事案で、原則的評価額と譲渡価額の差額を贈与により取得したものとみなして、贈与税の決定処分を認容しました。
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2007年4月25日発行
低金利時代に注意すべき営業権の評価
最近の税務トラブルとしてよく話題にのぼるのが、営業権の計上漏れを指摘されるということです。
例えば、同族間の株式の売買において低額譲渡を認定されるケースや、企業グループ内や親子会社間で無償による営業譲渡を行う場合に寄附金や受贈益を認定されるケースです。
営業権の評価は、一定の算式で計算した超過利益金額に基準年利率による複利年金原価率(10年)を乗じて求めますが、低金利である現在では、基準年利率が1.5%とされているため、ちょっとした優良会社なら計算上簡単に営業権が計上され、思わぬ課税が生じてしまうことがよく見られます。
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2007年3月25日発行
議決権の価値はゼロ!?明らかになった種類株式の相続税評価と事業承継プランニングへの活用
会社法の施行で多種多様の発行が認められ、その活用の幅が広がったといわれていた種類株式は、中小企業の事業承継対策においても注目されていました。2006年6月にとりまとめられた事業承継協議会の中間報告書においても、種類株式の相続税法上の評価方法が明確化されれば中小企業の事業承継での活用が期待できると提言されていたところです。
このような状況の下、平成19年度与党税制改正大綱に記載された3類型の種類株式の相続税等の評価方法の取扱いについて、中小企業庁が国税庁に照会し、2007年3月16日に同庁が文書回答という形で種類株式の評価方法を明確化しました。
中小企業の事業承継で活用が期待される典型的な種類株式として評価が明確になったのは、①配当優先の無議決権株式,②社債類似株式,③拒否権付株式の3類型の種類株式です。
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2007年3月25日発行
SPCの不動産売却時に留意したい固都税の取扱い
固定資産税及び都市計画税(以下、固都税といいます。)は賦課課税方式の租税といい、原則、賦課決定のあった日の属する事業年度において損金計上することとされています(法人税基本通達9-5-1)。固都税の場合、1月1日時点の固定資産の所有者に対し納税義務が生じますが、6月1日頃(自治体により異なります)に賦課決定があるため、納税義務の発生と損金計上の時期に約5ヶ月のずれが生じます。そのため、匿名組合出資を受けているSPC については、年初に物件を売却したとしても、最終の匿名組合損益分配は、固都税の賦課決定日以降となります。
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2007年2月22日発行
不動産流動化・証券化による利益分配額の減少が見込まれます!~平成19年度税制改正「減価償却制度の改正」より
平成19年の税制改正において、減価償却制度の改正が行われることとなりました。これは、減価償却制度について欧米等主要国との制度格差を無くすことによる国際的競争力の強化及び減価償却費の増加に伴い投下資本をより早期に回収できることとなったことによる新規設備取得への投資等を期待するものです。
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2007年2月22日発行
中間省略登記が認容される場合と課税上の取扱い
従来、不動産の売買において、副本申請の方法により事実上認められていた「中間省略登記」は、登記原因証明情報の添付を必須とする平成16年の不動産登記法改正後はできなくなっていました。
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2007年1月25日発行
信託法の改正に伴い信託税制が改正されました~平成19年度税制改正より
平成18年12月8日、第165回臨時国会において「改正信託法」が成立し、同15日に公布されました。この「改正信託法」では、多様な信託の利用形態に対応するために新たな信託制度を導入することがその改正の目的の一つとされています。平成19年度税制改正大綱では、この新しい信託制度に対応するための税制を整備する旨が記載されています。
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2007年1月25日発行
リース会計基準の変更が不動産実務に与える影響
平成18年12月に企業会計基準機構から「リース取引に関する会計基準(案)」が公表され、リース取引に係る会計処理の取扱いが変更されることが明らかになりました。
さらに、平成19年度の税制改正で、税務においても所有権移転外ファイナンス・リース取引につき原則として会計処理と一致する取扱いになることが明らかになりました。すなわち、借り手のリースの簡便性を維持するために、変更後リース会計基準と同一の税制上の処理が認められます。今後、リース取引に関する税務と会計の処理は原則として一致することになります。
ただし、税務が会計と全く一致するかどうか、既存の税務上の取扱いがどのように変更するかなどの詳細は明らかになっておらず、今後の法令・通達等の改正を待津必要があります。
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