2007年3月25日

議決権の価値はゼロ!?明らかになった種類株式の相続税評価と事業承継プランニングへの活用

会社法の施行で多種多様の発行が認められ、その活用の幅が広がったといわれていた種類株式は、中小企業の事業承継対策においても注目されていました。2006年6月にとりまとめられた事業承継協議会の中間報告書においても、種類株式の相続税法上の評価方法が明確化されれば中小企業の事業承継での活用が期待できると提言されていたところです。

このような状況の下、平成19年度与党税制改正大綱に記載された3類型の種類株式の相続税等の評価方法の取扱いについて、中小企業庁が国税庁に照会し、2007年3月16日に同庁が文書回答という形で種類株式の評価方法を明確化しました。

中小企業の事業承継で活用が期待される典型的な種類株式として評価が明確になったのは、①配当優先の無議決権株式,②社債類似株式,③拒否権付株式の3類型の種類株式です。

具体的な評価方法の概要は次表のとおりですが、今回の文書回答における最大のポイントは、非上場株式の相続税の評価上「議決権に価値はない。」という点が明らかになったことです。国税庁が正面切って議決権の経済価値をゼロと認定したことにより、今後の事業承継プランニングにおいては様々な新しい手段をとることが可能になると思われます。

例えば、事業承継者である相続人にとって、主観的に価値の高いものは議決権のある株式ですが、その相続税評価は無議決権株式と同じになります。そうすると、事業承継者にとって、無議決権株式が過大に評価され、逆に、議決権株式が過小に評価されることになります。そこで、生前に無議決権株式を大量に発行しておき、相続発生時には事業承継者に議決権株式を集中させ、無議決権株式を①配当還元方式が適用される非同族株主や②財団法人等に相続または遺贈することにより、より有利な事業承継を図ることが可能になります。

種類株式活用の工夫は様々に考えられますが、実務上、否認規定が適用される可能性も十分想定されますので、より慎重なプランニングが必要になったといえるでしょう。

【相続等により取得した種類株式の評価の概要】

2007年3月26日(担当:後 宏治)

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