2007年7月31日

自社株式80%評価減の衝撃

平成19年6月29日に、中小企業庁が設立した事業承継協議会から、事業承継税制検討委員会中間報告が公表され、我が国の事業承継税制に大きな変革をもたらす制度の提案が行われました。

すなわち、非上場株式の80%減免特例制度の創設です。

現行税制では、事業用資産の特例措置として、小規模宅地の評価減制度(事業用宅地であれば原則として80%の評価減)と非上場自社株式の10%評価減制度があります。後者の非上場自社株式の評価減は、その評価減額の上限等の制限が厳しく、あまり活用されていませんでした。

今回の中間報告では、非上場株式について広く80%の評価減を認めるよう提言されています。

具体的には、1.事業継続要件、2.株式保有継続要件(5年程度)、3.経営従事要件、4.雇用確保要件を満たせば、事業承継者の承継後の納税負担が、80%減免または納税猶予されることになります。

今回の提言の特徴的なことは、自民党と歩調を合わせて行われたことです。中間報告の内容は、平成19年6月19日に自民党の経済産業部会・中小企業調査会合同会議で了承された『自民民党・事業承継問題検討小委員会「中小企業の事業承継円滑化に向けた提言(中間取りまとめ)」』とほぼ同じです。

すなわち、今回の提言は、参院選をにらんだ自民党の公約となっており、その実現に向けて政府が動かざるを得ない状況となっています。

したがって、今回は課税当局も真剣に対応せざるを得ず、平成20年度の税制改正において何らかの形で提言された特例が盛り込まれる可能性が非常に大きくなっています。

この80%自社株評価減特例が創設されれば、既存の事業承継対策は大幅に見直しが必要です。現に実行に着手している場合はともかく、未着手の場合であれば、平成20年度の特例の形があらかた見えてくるまで、しばらく実行を延期した方がいいでしょう。

例えば、現時点で明確なことの一つは、事業に無関係な1.投資目的会社や2.財産管理会社の株式は、事業の継続・発展を図るための税負担減免措置の対象として適当でないことから、特例の対象から除外されることなので、現在の会社がどのような類型に当たるのかをはっきりさせることがまず必要です。

80%評価減の対象とならないと判明した場合には、組織再編税制等を利用して、事業構造の見直しに着手する必要が出てくるでしょう。

特例の要件はこれから定められていくと予想されます。今後の課税当局の動きには注意が必要です。

2007年7月31日(担当:後 宏治)

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