2012年のUAPレポート

  • 個人組合員は注意!通達の改正により変わる任意組合等の損益計算

     平成24年8月30日以降締結される組合契約により成立する任意組合、投資事業有限責任組合及び有限責任事業組合については、個人組合員の所得計算方法として原則総額方式※1しか採れないこととなりました。これによって、組合事業に係る損益がいずれか一つの所得区分に集約される純額方式※2では可能となっていた分離課税と総合課税の損益通算といったことが今後は原則不可能となります。これは、任意組合を利用した実質的な損益通算(UAPレポート2011年4月26日参照)に関する東京高等裁判所の判決(平成23年8月4日)で国が全面敗訴となったことを受けて通達が改正されたことによります。具体的には、これまで継続適用を条件に認められていた中間方式と純額方式について、総額法により計算することが困難であると認められる場合にのみ適用可能とする前提条件が追加されました。 

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  • 相続税法の「財産の所在」判定と国外財産調書制度~国内財産であっても「国外財産」として申告が必要なもの~

     国外財産調書の創設により、5,000万円を超える国外財産を有する居住者は、平成25年12月31日における国外財産の保有状況を記載して、平成26年3月17日までに税務署に提出しなければならないことになっています。

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  • 売上5億円超法人を擁するグループの消費税免税点制度利用に制限~平成26年4月1日以後新設法人の消費税には要注意~

     消費税率引き上げを柱とする社会保障と税の一体改革関連法案の成立により、資本金1,000万円未満の新設法人の免税事業者判定について、下記の通り消費税法が改正されています。

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  • 国外財産調書で報告対象となるもの、ならないもの~外国証券投資でも投資形態次第では対象外に~

     5,000万円を超える国外財産を保有している個人が、税務署にその内容を報告しなければならない「国外財産調書制度」が2013年末保有分から導入されます。海外預金が国外財??

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  • 翌課税期間に土地を譲渡する場合は、一括比例配分方式の選択はより慎重に

     平成24年4月1日以後に開始する課税期間から、その課税期間の課税売上高が5億円をこえる場合には、課税売上割合が95%以上であったとしても課税仕入にかかる消費税額の全額を控除することはできません。そのため、個別対応方式または一括比例配分方式のいずれか有利な方を選択することになります。ちなみに、①課税対応仕入×(1-課税売上割合)と②非課税対応仕入×課税売上割合を比較して①の方が大きい場合には個別対応方式の方が有利に、②の方が大きい場合には一括比例配分方式の方が有利になります(下記【具体例1】参照)。

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  • 信託受益権の相続税法上の所在場所

     相続税の課税関係を決定する重要な要素の一つに「財産の所在場所」があります。この財産の所在場所の具体的な判定基準は相続税法第10条に定められています。すなわち、動産または不動産についてはその所在する場所により決める、など、主な財産を限定列挙しその各々の所在場所を定めており(相法10①②)、列挙されていない財産の所在については、その財産の権利者であつた被相続人または贈与をした者の住所の所在により判定し(同③)、その際には、相続などで取得した時の現況で判定する(同④)こととされています。

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  • 繰戻し還付?繰越控除?欠損金利用時のポイント

     青色申告書を提出している法人※1に欠損金が生じた場合には、その欠損金を前事業年度に繰り戻して既に納めた法人税の還付を受けるか、その欠損金を翌期以降に繰り越して翌期以降に生じた所得から控除するかを選択することができます。通常、繰戻し還付の方が欠損金を早期に利用でき、キャッシュも入ってきますので有利に見えますが実際はどうなのでしょうか。

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  • 設立5年内のグループ法人との組織再編は要注意!

     A社が新設の分社型分割で100%子会社を2社設立します。最初にB社、次にC社です。そして5年以内にB社がC社を吸収合併します。税務上何か問題が発生するでしょうか?

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  • 金銭債権の一部貸倒れ(金銭債権の評価損)と貸倒引当金の廃止

     現行の法人税法上、資産の評価損が計上できる場合は限定されており、会社更生法や民事再生法の更生計画または再生計画の認可決定時における評価替等のとき以外(・・)では、①物損等の事実または②法的整理の事実がないと会社資産の評価損の計上はできません。

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  • 消費税95%ルール改正、一括比例配分方式は有利?不利?

     消費税増税が現実味を帯びてきました。法案通り成立すれば消費税率は平成26年4月から8%、平成27年10月から10%となり単純計算で納税額が倍になります。そのためこれまで以上に資金繰りに注意しなければなりません。そして、既に施行されている平成23年6月改正の「95%ルールの適用要件の見直し」も実は資金繰りに影響を与えますので、十分に留意する必要があります。改正によりこれまで課税売上割合が95%以上であることから課税仕入れ等の税額の全額が控除されていた事業者でも、平成24年4月1日以後に開始する課税期間における課税売上が5億円を超える場合には、個別対応方式か一括比例配分方式のいずれかを選んで仕入税額控除額の計算を行うこととされました。そのため、全額控除と比べて必然的に納税額が増加し、資金繰りに影響を与えてくるのです。

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  • 日本振興銀行木村剛元会長が申告漏れ。国税局の主張は通るのか。

     平成24年5月15日付の新聞報道等によると、元会長が振興銀行株式の譲渡について、東京国税局から約2億4千万円の申告漏れを指摘され、元会長はこれを不服として異議を申し立てたとあります。具体的には、元会長が経営破綻前の同銀行株式の譲渡益と経営破綻後の同銀行株式の譲渡損を通算(相殺)したゼロ申告に対して、東京国税局が、「破綻後の株式は譲渡所得の対象となる資産ではないため、通算は認められない。」としたもののようです。

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  • 非上場の外国法人株式は相続のときどう評価するか?

     企業の国際化に伴い相続財産に非上場の外国法人株式が含まれる場合が増えてきています。非上場の外国法人株式の評価方法については、従来、財産評価基本通達では明確な定めがなくはっきりしませんでしたが、国税庁は平成24年1月に更新した質疑応答事例において、下記の通り回答しています。

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  • 100%子会社から親会社への寄附

     100%の子会社が親会社に対して金銭を交付することがありますが、この金銭が「寄附」に当たるのか「配当」に当たるのか、実務上判断の困難な問題です。

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  • 消費税の税率アップを控えての事前準備

     「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律」が平成24年3月30日に閣議決定され、消費税の増税が現実味を帯びてきました。前回の税率アップ時と比べると、ここ数年来続いている消費税の課税強化と相まって、広範な影響が予想されます。そこで消費税の税率アップに伴う税負担の増加に対してどんな準備をすれば良いのかを考えてみます。

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  • 含み損のある固定資産の譲渡によって非上場株式の相続税評価額を下げることは可能か?~最新の質疑応答事例から~

     財産評価基本通達に基づく非上場株式の評価は、原則として、類似業種比準方式、純資産価額方式、または、これらのミックスで行われます。類似業種比準方式は、評価対象である非上場会社と、業種の類似する上場会社の「1株あたりの配当金額(B)」、「1株あたりの利益金額(C)」、「1株あたりの純資産価額(D)」を比較して非上場会社の株価を計算する方法です。比較の一要素である「1株あたりの利益金額(C)」については、法人税の課税所得を基礎として計算し※1、非経常的な利益金額は除かれます※2

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  • 新しい事業用資産買換え特例(9号買換え)の対象物件と経過措置

     平成24年度税制改正で、いわゆる事業用資産買換え特例(9号買換え)の買換え対象物件が下表の通り変わる見込みです。建物は従前どおり用途を問わず買換え対象となりますが、土地は面積300㎡以上の事務所、住宅等の敷地(併設駐車場を含む)と開発許可申請中の暫定的な駐車場利用のみが対象となります。税制改正大綱の表現からは、賃貸マンションなどの住宅敷地が除かれるのではないかと推測されましたが、どうやら政令で認められるようです(政令は現時点で未発表)。とは言え、300㎡未満の小規模土地は対象外となりますので、今まで影が薄かった他号の買換え特例や本法交換特例(100%課税繰延べ)を検討することも増えるでしょう。

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  • 相続税法改正による課税強化は早くても平成27年1月から

     一昨年の平成23年度の税制改正大綱では、相続税の増税改正案が示され、課税対象者の激増が確実となることがわかり、昨年の今頃は、その対応に右往左往していました。その記憶も新しい現在、あの相続税改正法案はどうなってしまったのでしょうか。

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  • 過大支払利子税制導入で思わぬ影響が

     平成24年度税制改正大綱によると、平成25年4月1日以降に開始する事業年度から、法人の関連者(その法人との間に直接・間接の持分割合50%以上の関係にある者及び実質支配・被支配関係にある者並びにこれらの者による債務保証を受けた第三者等をいいます。以下同じです。)への支払利子を利用した租税回避への対応として、過大支払利子税制が導入されます。ここで想定されている租税回避とは、支払利子が損金算入されることを利用して、所得に比して過大な利子を借入先である海外の関連者に支払い、グループ内で資金を循環させることで、法人税率等が著しく軽減または完全に免除される国(以下「軽課税国」といいます。)へ所得移転するというものです。例えば下図のように、グループ内の軽課税国法人から同じグループ内の外国法人を経由して資金借入を行うと、その支払利子相当の所得が軽課税国法人へ移転され、日本と軽課税国の税率の差額分だけ、軽課税国法人に資金が留保されることになります。また、その循環された資金を再度日本法人へ貸し付けることで、日本法人は実質的な資金流出なしで利子10を損金算入できたことになります。

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  • 国外財産調書の導入で海外移住や外国法人設立が増加?

     平成24年度税制改正大綱によると、その年の12月31日において5千万円を超える国外財産を有する居住者は、財産の種類、数量及び価額等を記載した『国外財産調書』を翌年3月15日までに税務署長へ提出しなければなりません。気になるところは、提出しなかった場合の罰則です。不提出又は虚偽記載の場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(情状免除規定あり)。また、不提出又は虚偽記載がなされた国外財産にかかる所得税について申告漏れ又は無申告がある場合には、通常の加算税に申告漏れ又は無申告にかかる所得税の5%相当が加算されます※1

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  • 下がる法人税と上がる所得税~中小法人の平成24年度以降の実効税率~

     所得税、相続税、消費税全てが増税傾向ですが、法人税だけは平成24年度から下がります。現在の中小法人の実効税率は下記の通り40.86%ですが、平成24年度から3年間は38.37%となり、それ以降は36.04%となります(いずれも年所得800万円超部分)。しかも中小法人の年所得800万円以下の部分は大幅に軽減されていて、2割ちょっととなります。

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