2023年12月27日

米国LLPは外国法人ではあるが、配当所得ではなく雑所得とする裁決事例

 米国LLP※1から生じた所得について、国税不服審判所令和5年3月1日付裁決は、そのLLPは日本の税法上は任意組合等ではなく外国法人に該当するため、各パートナーへの分離資本勘定への組入額(いわゆる損益分配額)が雑所得となる旨の判断を示しました。

 審査請求をしたのは法律事務所を営む個人事業主で、某米国人との間で法律サービスを提供することを目的として米国LLPを組成していました。各パートナーは現金をLLPの資本として拠出して、LLPで生じた純損益はその資本割合で、各パートナーの分離資本勘定(いわゆる出資持分)に加算又は減算されます。そして各パートナーは、各出資持分を限度として必要に応じて都合の良いときに出金することが事実上認められていました。

 国税不服審判所は、まず平成27年最高裁判決における判断基準を参照したうえで、LLPは権利義務の帰属主体であると認められることから、日本の税法上の法人に該当して、任意組合等には該当しないと判断しました。そして、各パートナーに係る会計上の分離資本勘定への組入額が申告すべき雑所得の収入金額となり、その金額はLLPの事業年度末に確定するとしました。配当所得ではなく雑所得と認定したのは、LLPから各パートナーへのLLP契約に定める現実の分配が省略されたからとされています。

 つまり、本件の米国LLPは外国法人に該当すると前提にしたものの、そのLLPから分配される利益は配当所得ではなくて雑所得であり、また、現金分配の有無にかかわらず損益分配額をLLPの事業年度末に収入計上するということですから、むしろその課税関係は任意組合や匿名組合に類似しています。

 平成27年最高裁判決を参照して外国法人と認定したものの、現実の現金分配が省略されていることを理由に配当所得性を否定して、損益分配額を雑所得として認定したロジックには違和感を覚えます。LLPを任意組合や匿名組合に類似の組織体である認定したほうが良かったのではないでしょうか。そうであれば、米国LLPを通じて得た所得について、日米租税条約上の特典を得られることがより明確になったものと考えます。

2023年12月27日 (担当:平野和俊)

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※1 どこの州で組成されたかは不明です

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