同族会社の株式交付※1が課税されることへの対応は
~令和5年度税制改正を受けて~
令和5年度税制改正により、令和5年10月1日以後に行われる株式交付については、株式交付後に株式交付親会社が同族会社※2に該当する場合には、株式譲渡損益の課税繰延措置の適用を受けられないこととなりました。上場会社の個人オーナーが資産管理会社に無税で上場株式を譲渡する方法として悪用されているものに対する規制と言われています。それではこの改正後に、同族会社において株式交付と同様の結果となる他の手法はないものでしょうか。
例えば、下記1.の現状において下記2.のように株式交換を行い、その後下記3.のように少数株主は資産管理会社に自己株式譲渡をして、その対価をもって事業会社の第三者割当増資を引き受けることで、株式交付と同様の支配関係を達成することができます。
そして株式交換時の課税関係ですが、株式交換は適格株式交換※3となり、金銭等不交付株式交換(所法57の4①)に該当することから株主の株式譲渡損益課税は繰り延べられるものと考えられます。次に少数株主は、資産管理会社の株式を自己株式として譲渡しますので、みなし配当と株式譲渡の課税関係が発生します。
以上のように、株式交換と自己株式取得&第三者割当増資を組み合わせることにより、少数株主への課税という犠牲のもとに、オーナーは課税を受けることとなく、株式交付と同様の持株移転を達成することができます。少数株主の協力を得られて、かつ、その課税負担が僅少な場合には、検討の余地があろうかと思います。
※1 株式交付とは、買収会社が対象会社を子会社とするために対象会社の株式を譲り受け、対価として買収会社自らの株式を交付する制度で、令和3年3月に施行されています。
※2 非同族の同族会社を除きます。
※3 金銭等不交付要件、支配関係継続見込み要件、従業者継続従事要件及び事業継続要件を充足することを前提とします。
過去のUAPレポート
- レポート検索