2008年1月29日

相続税が大きく変わる?~自民党税制改正大綱からみる相続税の今後~

平成19年12月13日に自民党から平成20年度税制改正大綱が発表されました。その中で事業承継税制として、平成21年度の税制改正による「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」の創設と共に“新しい事業承継税制の制度化にあわせて相続税の課税方式をいわゆる遺産取得課税方式に改めることを検討する。”と触れられています。

現在、日本において相続税を計算する場合、「法定相続分課税方式による遺産取得課税制方式」によります。これは、遺産の実際の分割の仕方とは関係なく、まず民法第5編2章に規定する法定の相続分に基づいて各相続人が遺産を取得したものとして各人の相続税額を計算し、次に遺産に係る相続税額としてそれらを合計し、最後にこの合計額について実際の遺産取得者が取得した財産の額に応じて負担するというものです。つまり、遺産に係る相続税の総額は、分割の仕方にかかわらず、遺産全体を基にして計算されます。それに対し、今回検討するとされた「遺産取得課税方式」とは、前述の「法定相続分課税方式による遺産取得課税制方式」に関する説明の前段部分をカットしたもの、つまり財産を取得した各人がどれだけの財産をもらったかに応じて、個別に相続税額を計算することになります。

なぜ、この時期に相続税の課税方式を変更するのかその理由は、①家意識が希薄化し個人の権利意識が強まったこと、②養子の数の制限等により遺産取得課税方式の弊害が少なくなっていること、③一定の特例により遺産の評価額が減額された場合には全体の相続税額が減少し特例を受ける相続人以外の納税額まで減少させてしまうという弊害が顕著になってきたこと、というものです。

では、課税方式の変更となった場合どのような影響があるのでしょうか。まず考えられるのは、相続税の申告が“一族単位”から“個人単位”へよりシフトすることです。

現行の相続税制度の下では、①他の相続人に対する相続税の連帯納付の義務の存在、②隠し財産が発覚した場合にそれを承継取得した人以外の相続税額が増加する可能性、③宅地の評価減等の特例をどの相続人のどの宅地から適用するか適用順序等、相続時・相続後も直接・間接的に相続人間の関係を重視する必要があります。もし、相続税の課税方式が遺産取得課税方式となった場合、各相続人はそれぞれ自分が取得した財産について各自申告して納税をすればそれで完結するわけですから、他の相続人の意向に煩わされなくなるメリットがありそうです。

一方で、課税方式の変更に絡めて注意すべき点もありそうです。先の税制改正大綱には「格差の固定化の防止、老後扶養の社会化への対応等相続税を巡る今日的課題を踏まえ、相続税の総合的見直しを検討する。」との一文も記載されています。
平成14年6月に税制調査会から出された「あるべき税制の構築に向けた基本方針」によれば、
 ①経済のストック化の進展により、今後、相続による資産移転の増加が見込まれる
 ②社会保障の充実により老後扶養における公的な負担の役割が高まっていることから、相続時に残された個人資産については、その一部を社会へ還元する必要がある
 ③高齢化の進展により、相続による財産取得が相続人のライフサイクルの後半にシフトしていく結果、相続財産が相続人の経済的基盤を形成する意味合いが相対的に薄れつつある

という相続税を取り巻く環境に鑑み、改革の方向性として、相続税の基礎控除を広く薄くの観点から引き下げの方向で検討すべきであるとされています。つまり、遺産取得課税方式に移行した場合、現行の相続税の基礎控除額(5千万円+法定相続人の数×1千万円)がそのまま使えるのではなく、大きく縮小されることが予想されます。

増税含みで相続税の改正が今後検討されていくことになりそうですが、世界の中の日本というくくりで相続税を眺めた場合、アメリカは2010年の廃止に向け段階的に遺産税を軽減しており、成長著しいロシア、インドでは相続税がないようです。国境を越えたタックスプランニングを考えた場合、一国にとどまる必要はありませんので、今後の日本の相続税制も世界的趨勢を考慮に入れた上で、大きく変わっていくものと考えられます。

2008年1月29日(担当:吉田 暁弘)


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