2008年1月29日

事業承継を計画する中小企業の基本法になるか~「中小企業の事業の継続の円滑化に関する法律(仮称)」~

平成20年度税制改正の大綱が公表され、待望の自社株80%特例(「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」)が制定されることになりました。

ここで注目されるのが、「中小企業の事業の継続の円滑化に関する法律(仮称)」(以下、「事業承継円滑化法」といいます。)です。

事業承継円滑化法は、「雇用を支え日本経済の基盤である中小企業について事業の円滑な継続を支援する」ことを目的として立法されます。この法律の施行日以後の相続等において自社株80%特例が適用され、かつ、適用要件に同法による経済産業大臣の認定が必要とされるなど、事業承継を計画する中小企業にとって極めて重要な意味を持ちます。

さらに、新聞報道によると、事業承継円滑化法には、自社株特例の他、次の2つの民法の特例措置が盛り込まれる予定です。

制度の名称(仮称) 内容
①遺留分算定基礎からの贈与株式除外制度 後継者へ生前贈与された自社株式を遺留分算定基礎財産から除外することにより、遺留分の紛争を未然に防止する制度
②贈与株式評価額固定制度 生前贈与された時点での株価で遺留分を算定することにより、後継者に自社株の価値の上昇分を保持させ、後継者に意欲を持たせる制度。

これらは、中小企業の自社株の相続に係る遺留分の特例で、この特例を受けるには、①経済産業大臣の確認を受けること、②遺留分権利者全員が合意すること、③家庭裁判所の許可を得ること等の要件を満たすことが必要となるようです。

以上のように、事業承継円滑化法において民法・税法の事業承継の便利な特例が整備されます。同法施行後の中小企業のオーナーは、これら特例を有効に組み合わせて活用していくことが必要になります。

例えば、【A】「①遺留分算定基礎からの贈与株式除外制度」や「②贈与株式評価額固定制度」を利用して権利面の保全を図ると同時に、相続時精算課税制度を利用して節税を図る、【B】生前贈与をせずに相続発生時点までオーナーが自社株を保有しておきながら80%特例の適用を受け、ほとんど無税で後継者に自社株式を承継させるなど、様々な特例の組み合わせが考えられます。

税制の細目や事業承継円滑化法の詳細は今後明らかになっていきますが、現時点で不明となっている重要項目は、生前贈与された自社株式について80%の相続税の特例があるのかどうかです。

農地の納税猶予特例のように生前贈与された自社株式にも80%特例が適用されるとなると、同制度は、民法特例と併用することにより、事業承継を計画する中小企業のオーナーにとって非常に使い勝手がいいものとなるでしょう。

今後の立法の動向には注目が必要です。

2008年1月29日(担当:後 宏治)


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