2006年12月21日

匿名組合契約に係る源泉徴収の人数要件が撤廃されました~平成19年度税制改正より

自由民主党が平成18年12月14日に決定した平成19年度税制改正大綱には、匿名組合契約に係る源泉徴収について下記の改正をする旨が記載されています。

「支払調書及び源泉徴収制度の対象となる匿名組合契約等に係る組合員の人数要件を撤廃し、すべての匿名組合契約等に基づく居住者又は内国法人に対する利益の分配を支払調書及び源泉徴収制度の対象とする。
(注)上記の改正は、平成20年1月1日以後に支払われる匿名組合契約等に基づく利益の分配について適用する。」

従来、居住者又は内国法人に対し、10人以上の匿名組合員と締結している匿名組合契約に基づく利益の分配の支払をする営業者は、その支払の際、当該利益の20%相当額を源泉徴収しなければならないとされていました。このため、極力匿名組合員の数を9人以下として源泉徴収義務が発生しないようにするファンドも多かったわけです。また、源泉徴収義務が発生しない場合には、支払調書の提出義務もありませんでしたので、当局としては所得の捕捉が難しく、特に個人投資家については多くの課税洩れが発生していたものと想像されます。

今般、平成19年度税制改正により、当該人数要件は撤廃されますので、平成20年1月1日以後は匿名組合員が1人でも源泉徴収義務が発生します。非居住者又は外国法人に対して支払う利益の分配については、従来より人数要件がありませんでしたので、これに揃えられるということです。

この改正の影響は小さくありません。最終的に確定申告で精算されるとはいえ、税金が前取りされることで、キャッシュフローは悪化します。IRRを重視する投資家にとっては重大事です。また、申告洩れを指摘される投資家も出てくることでしょう。

懸念されるのはダブルSPCスキームのキャッシュフローです。ボロワーSPCが納税した源泉所得税は、親会社SPCにおいて所得税額控除の対象となり還付されますが、還付の時期が遅くなると、親会社SPCにおける源泉所得税の納税が先行し、一時的な納税資金調達を迫られる可能性もあります。

いずれにしてもTKスキームを採用している案件は見直し必須です。

2006年12月21日(担当:平野和俊)

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