2006年12月21日

利益積立金のある会社を買収後に解散した場合の節税効果について

利益積立金のある会社を買収後に解散して残余財産の分配を受けた場合には、親会社において株式の消却損と益金不算入の対象となるみなし配当が実現することによって法人税等の負担が軽減することになりますが、このような取引について税務上の問題は全くないのでしょうか。

法人の株主等である内国法人が当該法人の解散による残余財産の分配や自己株式取得による金銭その他の資産の交付を受けた場合等においては、その金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額が当該法人の資本金等の額のうちその交付の基因となった当該法人の株式に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額は、受取配当等の額とみなされます(法法24)。

そして当該株式が連結法人株式等又は関係法人株式等に該当するときには、その受取配当等とみなされた金額が、それ以外の株式等については受取配当等とみなされた金額の50%が受取配当等の益金不算入の対象とされることになります(法法23)。

従いまして、例えば、他の法人を買収して100%子会社とした上で、当該法人を解散し残余財産の分配を受けることにより、損金に算入される株式の消却損と、益金不算入の対象となる関係法人株式等に係るみなし配当等の受取りが実現されて、法人税等の負担を軽減させることが可能になります。さらに、その買収した法人の資本金等の額が小さく、また利益積立金の額が大きいほど株式の消却損・みなし配当の金額とも大きくなり、より高い節税効果が発現されることになります。

現行の法制度においては、このような節税効果が発現する取引に対応する特段の規定は設けられておらず、課税当局がこれを否認する積極的な法的根拠はありません。課税当局が執り得る手段は、同族会社等の行為又は計算の否認(法法132)規定の適用のみになりますが、当該子会社の株式の取得及び解散について、その必然性・合理性がないと判断された場合には、適用されてしまう可能性も考えられます。

なお、子会社に自己株式を買取らせることによっても同様の節税効果が発現されることになります。他の法人を買収後に、親会社が取得した子会社株式を当該子会社に自己株式として買取らせるという節税スキームについては実際に課税当局も問題視している模様であり、このような取引を行う場合には、より一層の必然性・合理性が求められるものと考えられますので、慎重な判断が必要です。

2006年12月21日(担当:石渡正樹)

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