2006年11月24日

注目される非居住者認定と平成18年度税制改正による非永住者制度の改正

ここ数年、海外に生活の拠点を有するとして日本での税務申告を行わなかった納税者に対し、国税当局が申告漏れを指摘するケースが相次いで報道されています。
また、課税優遇措置を受けることができる「非永住者」の定義が平成18年度税制改正において改正され、その範囲が見直されました。
これらに共通するのは、高額納税者である個人が国際的な租税回避行為を行うのを防止しようとする動きであるということですが、今後ますます経済の国際化が進む中、軽視することができない論点となりそうです。

そもそも所得税法では、「日本国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて一年以上居所を有する個人」を「居住者」とし、居住者以外の個人を「非居住者」と定義しています。非居住者の課税所得の範囲は国内源泉所得に限られますので、累進課税により高率の税を課される高額納税者にとっては、非居住者となり少しでも税率の低い国外で納税することが有利であることは間違いありません。
居住者に該当するかどうかは、国内に住所または居所を有するかによって判断しますが、その判定は「客観的な事実」により「生活の本拠」が国内にあるかどうかによるとされており、実際の認定は国内における職業・親族・資産の有無等の状況により行われます。
先の報道等によれば住民票の有無や在日日数の長短ではなく、国内での職業や資産の状況や家族関係、国外における居所等の生活実態が重要視されるとのことですので、非居住者と認められるためにはその辺りを徹底的に準備しないといけないようです。

また従来、「居住者のうち、国内に永住する意思がなく、かつ、現在まで引き続いて5年以下の期間国内に住所又は居所を有する個人」は非永住者とされ、居住者でありながら国内源泉所得以外の所得で国外において支払われ、又は国内に送金されないものは課税所得の範囲外として優遇されていました。この非永住者制度については、その趣旨を逸脱して適用を受けている者も見受けられるとして、次のような問題点が指摘されていました。

  1. 外資系企業に就職した者(日本国籍)が、国外で数年間勤務した後、日本企業に転職し、日本の自宅から通勤しているような場合でも、永住の意思がないとして適用を受けている事例
  2. 外資系金融機関の日本支店に勤める者が平成9年に来日した後、平成13年まで非永住者として申告していたが、平成14年の途中にいったんアメリカに帰国した後、平成15年に再度来日し、平成15年からあらためて非永住者制度の適用を受け始めている事例

このような問題点に対処するため、平成18年度税制改正において、その定義は「居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去十年以内において日本国内に住所又は居所を有していた期間の合計が五年以下である個人」とされました。この改正により、前述したような手法により税負担を免れていた者は、本来の居住者となり、全世界所得について課税がなされることになりました。
この改正は平成18年4月1日以後適用されますので、さっそく平成18年分の確定申告から影響がでることになりそうです。

2006年11月24日(担当:中村敬)

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