2023年6月 2日

信託型ストックオプション税制が明確に

 国税庁は、令和5年5月30日付で「ストックオプションに対する課税(Q&A)」を公表して、信託型ストックオプションに係る課税上の取扱いを明確にしました。これまで実務界では、信託型ストックオプションについては、信託が有償でストックオプションを取得していることなどの理由から、役職員がその株式を譲渡した時に株式譲渡所得として分離課税されると解釈して、多くの企業が導入してきました。しかしQ&Aでは、信託型ストックオプションについては、実質的には会社が役職員にストックオプションを付与していること、役職員に金銭等の負担がないことなどの理由から、その経済的利益は労務の対価に当たり、新株予約権を権利行使した時に給与課税されると説明しています。

 つまり、国税庁としては(少なくとも建前上は)これまでも給与課税されるものと認識していたということですから、発行企業において過去に権利行使した役職員がいる場合には、速やかに源泉所得税を納付する必要がある旨も説明されています。今回国税庁としては、給与課税の根拠となる所得税法施行令84条3項の改正や通達発遣という選択肢もあったかと思いますが、Q&Aという形式にしたことで、過去の権利行使分も含めて必ず課税するのだという強い意思を感じます。

 また、Q&Aでは、信託型ではない有償型ストックオプションの課税関係についても説明されており、こちらは信託型とは異なり、権利行使時に給与課税されることはないとされています。これまでは、有償型ストックオプションの課税関係についても、当局からの明確な説明はなかったので、今後は安心して有償型ストックオプションを導入することができます。

2023年6月2日 (担当:平野和俊)

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