2016年のUAPレポート

  • 結局存続するタックスヘイブン対策税制のトリガー税率20%
    ~平成29年度税制改正より~

     「20%トリガー税率が廃止されて、受動的所得は原則として合算課税される見込み」と喧伝されたタックスヘイブン対策税制の改正ですが、平成29年度税制改正大綱によると、事実上トリガー税率は存続することとなりました。

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  • 中小企業にとってスキャナ保存制度は使える制度なのか?

     トレージの大容量化・低コスト化等に伴い、日々の業務活動によって生じた膨大な請求書・領収書といった書類について、場所を取らない電子データとして保存しておきたいというニーズが高まっているようです。電子データ化に当たっては、税務上の帳簿書類保存義務を満たすかということが必須の検討事項となりますので、国税関係書類のスキャナ保存制度の適用を受けるための要件を見ながら、中小企業の視点からスキャナ保存制度利用の是非について考えてみます。

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  • 富裕層をねらい打ちした国税庁の海外情報収集~国際戦略トータルプランより

     平成28年11月25日、国税庁は海外への資産隠しや国際的な租税回避などに対応する「国際戦略トータルプラン」を公表しました。このなかで、国税庁は富裕層への対応を重点課題として掲げ、具体的には、下記の4つの取組を実施することを明示しています。

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  • 外国子会社合算制度の見直し 対象地域は全世界へ

     内国法人が50%超を直接及び間接に保有する子会社を外国に設立した場合、その外国における租税負担割合が20%未満で、かつ、適用除外要件を満たさない場合には、子会社の所得は親会社である内国法人の所得に合算され、日本の法人税が課税されることになります。また、適用除外要件を満たした場合であっても、資産性所得に該当するものは合算課税の対象となります。そこで、子会社の所得が合算課税の対象とならないようにするために、租税負担割合が20%以上の国や自治体に子会社を設立するのが一般的です。

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  • 自己建設高額特定資産と建設仮勘定

     消費税においては、中小事業者の事務負担に配慮する観点から、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合には、消費税の納税義務を免除する「事業者免税点制度」が設けられています。その事業者免税点制度は毎年のように改正が行われ、その事業者が消費税の課税事業者か免税事業者かどうかの判断事項が年々増えています。

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  • 無償減資により欠損填補を行った法人を被合併法人とする適格合併の落とし穴!?
    ~欠損填補手続きの実施時期にご注意を~ 

     救済型の組織再編成として親法人(以下、「合併法人」)が欠損を抱える子法人(以下、「被合併法人」)を吸収合併(以下、適格合併を前提とします。)する際に、被合併法人で欠損填補手続きをした上で合併を行うことがしばしばあります。これは旧商法時代においては欠損法人を被合併法人として吸収合併をすることができなかったことの名残によるものと思われますが、実はここに思わぬ落とし穴があります。その落とし穴とは、法人住民税均等割増加の回避策がとれないことです。

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  • 「金融口座情報の自動的交換」における実質的支配者とは誰のことか

     OECDが主導する「金融口座情報の自動的交換」が2017年からいよいよ始まります。「金融口座情報の自動的交換」とは、タックスヘイブンなど国外の金融機関を悪用した脱税・租税回避を防止するために、非居住者(個人・事業体)として各国に保有されている金融口座情報を、税務当局間でほぼ網羅的に自動交換するものです。

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  • 任意組合出資持分の譲渡損益の所得区分

     任意組合の出資持分を譲渡したときの損益については、現行法令通達上、取扱いが明確にはされていません。実務では、組合財産そのものを持分割合分だけ譲渡したと解し、税務処理することが一般でした。すなわち、組合財産が土地建物であれば、その任意組合出資持分の譲渡に係る所得は、土地建物そのものの譲渡であり、分離課税の譲渡所得にあたると解されていました。

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  • 海外の無登録FX業者との取引損益は分離課税ではなく総合課税に
    ~平成28年度税制改正より~

     現在、「先物取引に係る雑所得等」として20.315%の申告分離課税(損失の3年間繰越控除も可)とされている金先物やFXなどの店頭デリバティブ取引のうち、海外の無登録業者との取引により生じた損益は、平成28年10月1日以降、雑所得等の総合課税とされます。

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  • 非上場株式を信託したときの同族株主判定

     非上場株式を信託すると、その株式に係る議決権は所有者である受託者に移転します。非上場株式の評価の上では、同族株主の存否及びその株主が同族株主か否か等により、原則的評価方式か配当還元方式の適用関係が決まります。

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  • 内部造作を行った場合の減価償却方法の注意点

     法人が自己所有の建物に内部造作を行った場合には、建物付属設備に該当するものを除き、その内部造作の構造がその建物の骨格の構造と異なっている場合であっても、その建物に含めて建物の耐用年数を適用します。その理由は、建物の税法上の耐用年数は、一般的な内部造作を含めて算定されているからです。したがって、建物が鉄筋コンクリート造で事務所の用に供されているものであれば、内部造作部分についてもその建物の耐用年数50年により償却します。仮に、その建物が既に耐用年数を経過していたとしても、新たに取得した内部造作部分についての耐用年数は50年です。

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  • 税務署は法務局の株主リストを閲覧できるようになるのか?

     商業登記規則が改正されて、役員の変更登記などの株主総会決議が必要な登記申請書には、2016年10月1日から、新たに株主リストの添付が義務づけられることになります(改正内容はパブリックコメント募集時のウェブサイトを参照)。法務省の資料によると、「株主総会議事録等を偽造して役員の変更登記を行った上で会社の財産を処分するなどの犯罪を抑止するため」とのことですが、株主名簿を(あえて?)整備していない中小企業には頭の痛い改正となっています。また、株主リストには、「議決権割合の高い上位10名の株主」又は「上から議決権割合3分の2に達するまでの株主」のいずれか少ない数の株主について、①氏名又は名称、②住所、③各株主の株式数・議決権数及び④各株主の議決権割合、を記載する必要があります。

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  • 平成28年4月1日以後相続における非上場自社株式評価額の上昇

     平成28年4月25日、国税庁はそのHPにおいて「財産評価基本通達の一部改正について(法令解釈通達)」を公表しました。改正通達では、非上場株式を評価する場合の純資産価額方式で用いる法人税額等相当額の控除割合が38%から37%に引き下げられました。平成28年4月1日以後の相続や贈与により取得した非上場株式の評価においてはこの控除割合が適用されるため、その評価額は上昇することになります。

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  • 馬券訴訟を例に附帯税を考える

     コンピューターソフトを利用せず、独自のノウハウにより継続的に購入した馬券の払戻金が一時所得か雑所得かで争われている訴訟は、平成28年4月21日東京高裁において納税者の逆転勝訴となりました(国側も最高裁に上告の申し立てを行い係争中)。本訴訟では、払戻金の所得区分及びはずれ馬券の必要経費性が争点となっていますが、ここでは少し見方を変えて、本訴訟で明らかになった税務署側の課税処分を基に、特に附帯税について考えてみたいと思います。

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  • 未払賞与と所得拡大税制の当初申告要件

     会社の業績が良い事業年度末に従業員に対して決算賞与を支給することがあります。その事業年度に実際に賞与を支給しない場合でも、一定の要件※1を満たせば翌事業年度の支給額を未払賞与としてその事業年度に損金算入することができます。その分その事業年度の利益が減少し、納税額も減ります。

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  • 2017年から外国の金融口座情報が日本の税務当局に筒抜けに!

    OECDが主導する「金融口座情報の自動的交換」が2017年からいよいよ始まります。「金融口座情報の自動的交換」とは、タックスヘイブンなど国外の金融機関を悪用した脱税・租税回避を防止するために、非居住者として各国に保有されている金融口座情報を、税務当局間でほぼ網羅的に自動交換するものです。例えば、日本人が香港のHSBCに隠し口座をもっていても、その残高、利息収入などが、HSBC→香港の税務当局→日本の税務当局、という経路で自動的に報告されるという仕組みです。

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  • 1億円超の空き家を分割して売却したときの3,000万円特別控除

     大変な勢いで増加する空き家の発生を抑えるため、平成28年度の税制改正で、空き家を売却した際の譲渡所得の特別控除の特例(空き家の3,000万円特別控除)が創設されました。

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  • 特別目的会社を用いた消費税節税スキームの終焉?(平成28年度税制改正より)

     平成28年度税制改正により、遂に特別目的会社(以下、「SPC」)を用いた節税スキームが終焉を迎えそうです。平成25年7月22日UAPレポートでも未稼働法人を用いた消費税節税スキームを簡単にご紹介しましたが、このスキームに対して国のメスが入ることとなるためです。

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  • ほとんど下がらなかった中小法人の実効税率~平成28年度税制改正より~

     「法人実効税率が29%台に!」という平成28年度税制改正記事を見て、にっこりされた中小企業経営者の方も多かったのではないでしょうか。しかし残念ながら法人実効税率が29%台に下がるのは、大法人に適用される外形標準課税(事業税)の引上げとバーターですから、その恩恵を受けるのは資本金が1億円を超える大法人に限られます。資本金が1億円以下の中小法人の実効税率はほとんど下がりません。東京都の中小法人で具体的に計算してみると、下表の通り年所得800万円超部分の実効税率が、平成28年度で0.54%下がって34.81%、平成30年度で更に0.22%下がって34.59%と「ほんの少し下がる」というのが実態です。年所得800万円以下部分の実効税率は変わりません。

    また、国税及び地方税トータルの税負担はほとんど変わらないものの、平成29年度から国税の税率は上がり、地方税の税率は下がります。年所得800万円超部分に対する国税(法人税&地方法人税)の合計税率は平成28年度で24.43%となりますが、平成29年度で25.81%(1.38%増加)、平成30年度で25.59%(平成28年度から1.16%増加)となります。法人税だけが課税される支店等のない外国法人にとっては若干の増税となります。また、欠損金の繰戻還付を受ける法人にとってはささやかな朗報となります。

    <東京都中小法人の実効税率>

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