2015年7月 1日

法人住民税均等割の税率適用区分基準見直しによる中小法人への影響

 法人には法人住民税といわれる地方税が課税されます。これは「法人税割」と「均等割」から構成されます。「法人税割」は法人税額に一定の税率を乗ずることで計算されますので、利益が大きいほど法人税割の部分は大きくなります。一方、「均等割」は法人の規模(「資本金等の額」と従業員数により判定)に応じて一定額を課税します。従って、利益の大小に関係なく(たとえ赤字であったとしても)一定額が課税されます。例えば、東京都(23区内)にのみ事務所を置く法人の場合で、従業員数50人以下で「資本金等の額」が1,000万円以下のときは70,000円、「資本金等の額」が1,000万円超1億円以下のときは180,000円の均等割が課されます。

 「資本金等の額」は法人税法で定義されている用語であり、均等割の額を決める基準について平成27年4月1日以降開始事業年度より、以下の改正が行われています。

 『資本金等の額が資本金と資本準備金の合算額を下回る場合には、資本金と資本準備金の合算額を税率適用区分の基準とする。』

 昨今、上場会社において株主対策として市場からの自己株式の取得が多く行われています。自己株式を市場から取得した場合、会計上は自己株式勘定により貸借対照表上の純資産の部でマイナス表示するだけで「資本金と資本準備金の合算額」は変わりませんが、法人税法上は「資本金等の額」をその自己株式取得時の時価により減少させることになります。従って、上場会社で貸借対照表上の資本金が数百、数千億円規模の会社であっても、「資本金等の額」が大きく減少することにより均等割の税率適用区分が最低のところで課税されるという事象が生じていました。そこで、法人の規模に応じて相応の負担をすることを目的として、実務上特に負担無く税率適用区分の判定ができるよう上述のような基準の改正が行われました。

 今回の改正は、主に上場会社の現況をみての改正となりますが、中小法人においても過去に自己株式を取得している会社等では影響を受ける可能性があります。「資本金等の額」は法人税申告書別表五(一)で確認でき、「資本金と資本準備金の合算額」は貸借対照表で確認できます。基本的には両者の金額は一致しますが、過去に自己株式の取得などをしている場合には「資本金等の額」が「資本金と資本準備金の合算額」を下回ることがあります。その場合、「資本金と資本準備金の合算額」が均等割の税率適用区分を決める基準となりますので、従前までは税率適用区分が最低のところで課税されていたところ、税率適用区分が上の区分に上がり、税負担が増加する可能性がありますので注意が必要です。

2015年7月1日 (担当:上田悟志)

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