2010年6月29日

不動産流動化、イグジットでの源泉徴収義務にご注意を!

 最近、GK-TKスキームによる不動産流動化のイグジットでよく目にするケースがあります。それは、①LTVやDSCRなどの指標が基準値に抵触して、または②リファイナンスの条件として、配当停止となったため、毎期の匿名組合決算で継続して利益分配額が発生していても金銭が交付できない状態(以下、「未払分配金」といいます。)が継続し、イグジットでは厳しい不動産売却交渉を経て売却損が発生した結果、最終的に匿名組合員へ未払分配金および元本の一部または全部の支払が行えないケースです。

 この場合、未払分配金に対する営業者の源泉徴収義務の有無が問題となります。具体的に、不動産売却の結果、未払分配金および元本に対し分配できる金銭が「0」となってしまった場合を考えてみましょう。

 源泉徴収義務は、原則として、債務の支払の際に生じることとされているため、現実に金銭を交付しなければ営業者に源泉徴収義務は生じないと一般に考えられます。

 しかし、所基通181~223共-2本文では、支払者が支払債務の免除を受けた場合には、その免除を受けたときにその支払があったものとして源泉徴収を行うことが明記されています。匿名組合契約が終了し最終的に営業者が清算する過程において、支払が行えない未払分配金および元本は必ず債務免除を受けることになるので、通達を文言どおり解釈すれば営業者に源泉徴収義務が生じる可能性がありそうです。

 一方で、債務超過の状態が相当期間継続し支払不能と認められる場合には、支払債務の免除を受けても源泉徴収の必要がないこととされています(所基通181~223共-2但書き)。また、法的整理に伴い一般債権者の損失軽減のために役員賞与等の辞退を受けた場合も、源泉徴収が不要とされています(所基通181~223共-3)。これらの通達の適用又はその趣旨から、未払分配金のようにやむを得ず債務が消滅し債務免除をうけた場合は営業者に源泉徴収義務がない、と解することもできます。

 また、以上の解釈に入る前に、そもそも営業者には未払分配金にかかる法的な支払債務は発生していないとも考えられます。すなわち、未払分配金は、利益分配額の相手勘定として会計上債務に計上したものに過ぎず、法的な意味での債務ではないという考えです。そうだとすると、営業者には源泉徴収が必要とされる支払債務が存在していないため源泉徴収義務はない、とも考えられます。

 このように源泉徴収義務の有無を通達から判断するのは非常に難しく、匿名組合契約の個別の内容や債務免除の時期及び方法によっては、源泉徴収が必要となることも想定されます。もしも営業者に源泉徴収義務が生ずると、資金繰りの問題から源泉所得税の納付は非常に困難になりますので、ご心配があるファンドマネージャーはお早めにご相談下さい。

2010年6月30日 (担当:川村崇)

 

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