2008年12月25日

自己信託等が法人課税信託となる収益分配割合が変更可能である場合とは?

「自己信託等で収益分配割合が変更可能である信託」は、法人課税信託に該当しますが、その要件は「その信託の効力が生じた時において当該法人又は当該法人の特殊関係者をその受託者と、当該法人の特殊関係者をその受益者とし、かつ、その時において当該特殊関係者に対する収益の分配の割合の変更が可能である場合として政令で定める場合に該当したこと」(法法2二十九のニハ(3))とされています。

法人課税信託に該当した場合には、その信託から生じた所得は受託者において課税されます。これは、たとえば、親会社の黒字部門を信託しその受益権を赤字の子会社に取得させた場合に、各年度の子会社の所得に応じて信託の収益分配割合を意図的に操作することで、本来の税負担を軽減させるという租税回避行為を防止するためです。

ところで、収益の分配割合の変更の要件は、「受益者、委託者、受託者その他の者がその裁量により決定することができる場合とする」(法令14の5⑥)とされています。たとえば、信託行為により、受益権を取得した子会社がその収益の分配割合をその子会社だけの裁量により変更できる場合には、当然に法人課税信託に該当することになります。また、信託行為には変更の定めがなく、その割合が確定的に定められている場合であっても、信託行為の別段の定めによりその割合の変更を特定の者が単独で行う権限を有することとされる場合も法人課税信託に該当することになります(法基通12の6-1-4)。

信託法では、「信託の変更は委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる」(信託法149①)としていますが、この場合は、三者間の合意が必要であることから、通常は「受益者、委託者、受託者その他の者がその裁量により決定することができる場合」には含まれないものとされます。“単独”で変更できることがポイントになりそうです。

なお、収益の分配割合が変更できないとしても企業の一部門を信託する場合には、別の要件を満たすと、「事業の重要部分の信託で委託者の株主等を受益者とするもの」(法法2二十九の二ハ(1))や「自己信託等で存続期間が20年を超えるもの」(法法2二十九の二ハ(2))といった法人課税信託に該当する場合がありますので、確認が必要です。

2008年12月25日(担当 栗田 倫也)

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