2008年2月25日

公募株式等証券投資信託の解約時の取り扱いが、譲渡時と同じになりました.~平成20年度税制改正より~

現在、公募株式等証券投資信託については換金方法が2種類あり、これによって課税関係が異なることがあるため、投資家には分かりづらくなっています。
1つ目の換金方法は買取です。これは、投資家が受益権を証券会社に譲渡し、譲渡代金を受取る方法です。
2つ目の換金方法は解約です。これは、投資家が証券会社を通じて、契約を解約し価値を現金化する方法です。

両者とも、換金するという意味では相違はありません。しかし、買取の場合は、譲渡対価と取得費の差額を譲渡益として譲渡所得で課税され、又は譲渡損として株式売却益等と相殺されます。一方、解約の場合は、償還金額が個別元本を上回った場合についてのみ配当所得として課税されます。
なお、平成15年度税制改正において、株式市場の低迷により元本割れが相次いでいることから、投資へ促進するために投資リスクを緩和することが必要となり、そのため、解約の場合で、償還金額が個別元本を下回った場合について譲渡損失を認識し、株式売却益等との相殺を実現させるべく、みなし収入金額の規定を置くこととなりました。
これにより、元本割れした場合においては買取・解約いずれの方法によった場合でも譲渡損失を認識することができるようになり、課税関係の調整が図られていました。

【図解1】 設定:取得費>個別元本>解約価額

図解1

ただ、元本割れをしなかった場合については、課税関係の異なる点を解消するまでには至っていませんでした。

【図解2】 設定:解約価額>取得費>個別元本

図解2

<相違点>
平成15年度税制改正において、元本割れをしていなくても譲渡損を認める措置をとり、買取の場合との運用結果に不均等が生じないように図られていました。
ただ、上記【図解2】の【買取】と【解約】を見比べると、元本割れをしなかった場合の課税関係について、実際に配当所得と譲渡損を相殺する規定が存在しないため、譲渡損を認めたとしても配当所得については課税されることになるため、買取を行った場合に比べ、解約の方が配当と相殺することができない譲渡損部分だけ税負担が重くなってしまいます。

また、他の株式の譲渡損が生じている場合についても、買取であれば譲渡益と相殺することができますが、解約の場合では、他に譲渡損が生じていたとしても、配当とは相殺することができないため、配当所得についての課税分の税負担が重くなってしまいます。
そこで、平成20年度税制改正において、平成21年1月1日より、公募株式等証券投資信託の終了又は一部の解約により交付を受ける金銭の額その他の資産の価額については、その全額を株式等譲渡所得等の収入金額とみなすこととしました。

改正前と改正後の取り扱いは以下の通りです。
<改正前>
(1)配当所得
解約価額-個別元本=配当所得
(2)譲渡所得
個別元本-取得費=譲渡損
<改正後>
(1)譲渡所得
解約価額-取得費=譲渡益or 譲渡損

【図解3】  設定:解約価額>取得費>個別元本

図解3


上記【図解3】の【買取】と【解約・改正後】を見比べていただくと、平成20年度税制改正における公募株式等証券投資信託の取り扱いは、配当所得と譲渡損益が混在している現状を、譲渡所得で一本化する整備がされたといえます。

2008年2月25日(担当:桑田洋崇)


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