2005年2月22日

DES(デット・エクイティ・スワップ)を行った際に債務免除益課税される可能性はあるか?

DES(現物出資型、以下同じ)を行った場合の債権者側の課税関係は平成15年2月28日に公表された法人税基本通達2-3-14(債権の現物出資により取得した株式の取得価額)により明らかとなっていますが、債務者側の課税関係を明示した法令・通達等はありません。「資本等取引なので債務免除益課税はない」というのが多数説のようですが、課税される可能性があるという意見もあります。私見をまとめてみたいと思います。

(前提)債権券面額100(債権者の簿価10、評価額10)が現物出資されて新株を発行します。平成12年に東京地方裁判所商事部は券面額説を採用することを明らかにしていますので発行価額は100となります。この全額100を資本金とします。

1. 適格現物出資以外の場合
券面額説とは、出資者がどれだけの価値の財産を拠出したかを基準とするのではなく、発行会社における債務減少をもって純資産額の増加(=資本の増加)とする考え方です。この考え方にたつと受入仕訳は、(借方)債務100(貸方)資本金100となります。つまり債務免除益の計上はありません。

(借方)債権10と受け入れたうえで、債務100との相殺仕訳によって90の債務免除益を計上するという考え方もありますが、これは評価額説にたった処理です。商法が券面額説にたつ以上、税務も券面額説によらざるをえないと考えます。仮に(借方)債権10と受け入れた場合には、貸借差額として▲90の資本積立金額を計上する必要がありますが、法法2十七イにより資本積立金は「株式(適格現物出資により現物出資法人に発行するものを除く。)の発行価額のうち資本に組み入れなかった金額」と定義されており本件では0となりますので、この受入は不可能です。

2. 適格現物出資の場合
基本的な考え方は上記1.と同じですが、適格現物出資の場合には資本積立金額の定義が、「適格現物出資により移転を受けた資産の現物出資法人の当該移転の直前の帳簿価額から当該適格現物出資により増加した資本の金額を減算した金額(法法2十七ト抜粋)」となります。債権が「移転を受けた資産」に該当すれば資本積立金額は(10-100=▲90)となり、(借方)債権10と計上して債務100との相殺仕訳によって90の債務免除益を計上する根拠となります。しかし券面額説によれば債務の減少によって資本が増加するのですから、DESにおいては「移転を受けた資産」は存在せず「消滅した債務」と読み替えるべきであると考えます。

以上よりどちらの場合でも債務免除益課税はないというのが結論ですが、適格現物出資の場合には条文の構成上課税リスクは残ると考えます。

2005年2月22日(担当:平野和俊)

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