2004年11月24日

任意組合方式による航空機リースに係る損益通算で納税者側勝訴(名古屋地裁)

~争点に対する裁判所の判断を分析しました~

名古屋地裁は民法上の組合契約(以下「任意組合」という)方式による航空機リースに係る損益通算で納税者勝訴の判決を行いました(平成16年10月28日言渡)。この投資は、個人投資家が投資期間の前半に減価償却費から成る損失の分配を受けることで、損益通算による所得税節税を図ると共に、譲渡時には長期譲渡所得の低税率によることでトータルの納税額圧縮を図るものです。但し、航空機譲渡時の価格下落リスクや為替リスクを伴う投資であることから単純な節税商品でもなく、裁判所の判断が注目されていました(国税不服審判所では損益通算を否認)。

まず裁判所は、「組合契約」の解釈が問題となるところ、契約書等の外形的資料にかかわらず事実認定によって当事者の真意を明らかにし、これによって課税関係を規定することは租税法律主義に反するものではないことを明らかにしています。しかしながら、合理的経済人にとっては税負担を考慮して契約類型を検討することはむしろ通常であり、異なる事実認定が許されるのは、それが社会通念上著しく複雑、迂遠なものであって、到底その合理性を肯認できないものであるか否かの客観的な判断が必要であると論じています。具体的には、1.経済合理性を欠き、2.法形式が異常である場合です。

1.については、損失・利益の両方の可能性があり、節税効果を考慮して初めて成立する投資ではなく、納税総額の減少は所得税法の優遇措置などを適用した結果に過ぎないとして経済合理性を認めています。2.については、任意組合契約は単なる利益配当契約よりも出資者の利益に配慮することが可能であり、出資者を募ることが容易となることから、通常用いられない法形式とはいえないとしています。

また課税当局は、仮に任意組合と認定されたとしても、その所得は雑所得に該当するとの主張もしています。これに対して裁判所は、他事案の任意組合員と異なる課税関係とすることは、平等原則に反するおそれを否定できず、組合員の事業関与等に応じて課税効果を異にする解釈は租税法律主義に反するおそれがある、として雑所得に該当しないとしています。

大変注目すべき判決ですが、同様の事案につき東京地裁等で納税者敗訴している映画投資事業組合の判決と比較した場合、何が勝敗を分けたのかはっきりしません。今後の判決動向が気になるところです。但し、平成17年度税制改正でリース事業については対応策がとられるとの噂もあり、実務的には法改正という形で決着するかもしれません。

(注)判決本文は93ページと膨大な量のため、上記内容は抜粋となっています。

2004年11月24日(担当:平野和俊)

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