2004年11月24日

外形標準課税の対象外とするための無償減資

~資本金1億円超の会社は利益がなくても外形標準課税により事業税が課されることとなります~

法人の平成16年4月1日以降開始の事業年度から外形標準課税の適用開始となりました。外形標準課税の適用対象となるのは期末資本金額が1億円超の法人ですから、一番早ければ来年の3月末日の資本金額が1億円を超える法人は、その事業年度において利益がなくても外形標準課税により事業税が課されることとなります。

一般的に持株会社などの場合、資本金額は大きくても利益が出ていないことが多く、これまでの地方税均等割に加えて外形標準課税による税負担が増えてしまうことになります。外形標準課税の適用から外れるために、この機会に減資を考える経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

減資には株主への払い戻しを伴う有償減資と、払い戻しはせずに単に資本金額を減少させるだけの無償減資の2つがあります。外形標準課税に対応するという目的であれば、会社の財産が減少せず株主にも課税関係の生じない無償減資が選択されることになります。

無償減資を行った場合、減少した資本金の額は資本剰余金のうち「その他資本剰余金」(税務上の資本積立金)に振替られます。地方税の均等割の課税標準は「資本等(資本金額+資本積立金額)」の額ですので、減資の前後で変化なく均等割の額は従前のままですが、外形標準課税の課税対象の判定は「資本金」の額で行われますので、資本金額を1億円以下まで減資すれば課税対象とはなりません。

また株式会社と有限会社とでは減資の方法が異なります。株式会社の場合には株式数を変えずに資本金を減少させることができますが、有限会社の場合には「資本=1口当りの出資金額×総出資口数」でなければならないため、1.1口当たりの出資金額を減少させる方法(定款変更が必要です)、または2.出資口数を減少させる方法(持分併合又は無償の強制消却)のいずれかによることとなります。

無償減資の手続きとしては、(1)株主総会(有限会社の場合には社員総会)の特別決議、(2)株主総会後2週間以内に債権者保護手続きとして官報公告及び知れたる債権者に対する個別催告が必要となります。減資の効力発生日は債権者保護手続きが終了した時点ですので、外形標準課税の判定時期である事業年度末において効力が発生しているように計画を立てて手続きを進めることが大切です。

なお、無償減資を行うことが事業承継対策になることもあり得ます。「その他資本剰余金」に振替えられた減少資本金の額は配当可能利益となります。比準要素数1の会社が配当をすることで一般の評価会社となり、株式評価額が引き下げられる可能性があるからです。

2004年11月24日(担当:奥村香子)

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