2004年10月25日

リース事業への匿名組合出資は株価対策に有効か?

~匿名組合出資の相続税評価に明確な規定は無いのですが・・・~

会社オーナーの方々の事業承継には、後継者への自社株移転をスムーズに行うための対策が必要です。自社株対策の大きな論点として、株価(自社株評価)の引き下げがあります。

株価対策として航空機等のリース事業への匿名組合出資を活用するケースが従前より見受けられますが、それは次の3つの効果を期待するためです。第1の効果は、損失分配額の未払金計上等による純資産価額の引き下げです。第2の効果は、損失分配額の一時的な計上で利益を圧縮することによる類似業種比準価額の引き下げです。そして第3の効果は、匿名組合出資金を資産計上し株式等以外の資産を増やすことによる株式保有特定会社の非該当(株特はずし)です。

まず第1及び第2の効果について考えてみましょう。財産評価基本通達(以下、「財基通」)には株価算定における匿名組合出資の評価方法に関する規定はありませんが、一般的には(1)出資金・未払金(損失分配額の累計)ともに簿価評価する、(2)(1)同様に簿価評価するが、未払金は出資金額を限度とする、(3)匿名組合の清算金相当額を評価額とする(資産税質疑応答事例集・平成13年3月・国税庁課税部)、(4)匿名組合出資をファイナンス取引とみなして出資金は簿価評価するが、損益分配は無かったものとして未払金はゼロとする、の4つの評価方法が考えられます。実務上は(1)又は(2)の方法が採られていることが多く、従前は是認されてきたように見受けられますが、UAP REPORT Vol.1でもご案内のとおり、最近では個人・法人のいずれにおいても損失分配を否認する事例が出てきています。このような現状を鑑みると少なくとも(3)の方法、さらに保守的に考えるならば(4)の方法によるのが適当であると思われます。そうなると(3)の方法では純資産価額の引き下げに関してそれほど大きな効果は期待できず、(4)の方法では株価引き下げの効果はありません。

また財基通189によると、株式評価前に合理的理由も無く資産構成の変動があり、それが株特はずしを目的としたものである場合には、その変動が無かったものとして判定をすると規定されており、第3の効果も否認される可能性があります。

株価対策としてのリース事業への匿名組合出資の活用は、それを規制する明確な規定が存在しない限り有効性を完全に否定されるものではありませんが、実際の採用については慎重に検討する必要があると思われます。

2004年10月25日(担当:奥村香子)

ページトップへ