2004年10月25日

土地建物等の契約日基準による平成15年中の譲渡申告が今からでも認められます!

~平成16年8月4日付で国税庁課税部が事務連絡を発遣~

平成16年度の税制改正で、居住用以外の土地建物等の譲渡損益と他の所得の損益通算が認められなくなり、また、譲渡損失の翌年以後3年間の繰越が認められなくなりました。長期譲渡所得の100万円特別控除も廃止されています。この改正税法は平成16年4月1日に国会で可決・成立したにもかかわらず、平成16年1月1日にさかのぼって適用されたために、「不利益不遡及」の原則から問題があると批判され、課税当局側の期限後対応が注目されていました。

譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、原則として、資産の引渡があった日によるものとされておりますが、納税者の選択により、契約の効力発生の日により総収入金額に算入することも認められております(所基通36-12)。ですから、契約の効力発生が平成15年中、引渡が平成16年中であるような場合には、原則通り引渡基準を選択し平成16年分の譲渡所得とすることも、契約日基準を選択し平成15年分の譲渡所得として申告することもできることになります。しかし、納税者が税制改正案について十分に検討することができないまま引渡基準を選択したことで、納税者に税務上の不利益が生じている場合があります。例えば、譲渡損が生じており平成15年中であれば給与所得と損益通算できたケースです。

そこで、国税庁では平成16年8月4日付の「契約ベースにより平成15年分所得税の期限後申告書等が提出された譲渡所得事案の処理について(事務連絡)」において、今回の税制改正に起因して契約日基準による平成15年分の期限後申告書、又は更正の請求書(還付手続き)が提出されたと認められる場合には、その提出により契約日基準の選択を認める取扱いをする旨の事務連絡を発遣しました。契約日基準の選択は原則として、当該契約日の翌年3月15日(確定申告期限)までとされています。しかし、その選択が確定申告後となってしまったことについてやむをえない事情がある場合には、従来より期限後申告書等の提出による契約日基準の選択を認める取扱いがされています。つまり、今回の税制改正による「不利益遡及」が「やむを得ない事情」に該当すると認められたことになるわけです。

ただし、平成15年中の契約の実態のないものについては認められませんので留意が必要です。

2004年10月25日(担当:石渡正樹)

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