2006年4月28日

営業者で発生した税務否認金を匿名組合契約に基づき出資者に分配することは可能か

現在流動化スキームにおけるビークルとして広く用いられている匿名組合は、同様にパススルー事業体としての性格が確保されている組合事業体である任意組合とは異なり、営業者が一次的に法人税の課税対象とされることから、営業者段階で税務否認金が生じる場合が想定されます。
この営業者で生じた税務否認金を出資者である匿名組合員に分配することは税務上可能でしょうか。

この税務否認金の取扱いについて法人税法では明確な規定がありませんが、平成17年12月26日に改正される前の法人税基本通達14-1-3(注)で、匿名組合の損益分配の計算に、任意組合の損益分配に純額法を用いた場合の寄付金又は交際費の損金不算入額の計算方法を準用すべきとされていることから、匿名組合においても出資者に対し税務否認金を分配できるものと解釈されてきていました。
ところが、上記の改正においてその(注)部分の記載が削除され、また、改正の趣旨等の説明もないことから、税務否認金の分配の可否がよく分からない状態になっています。

そもそも法人税法における匿名組合契約に関する規定は先に述べた法人税基本通達14-1-3のみで、そこでは匿名組合員側の損益の計上時期と営業者側の課税所得の計算における匿名組合員に分配する利益又は損失の取扱いについて記載されています。その記載によれば「・・・匿名組合契約により匿名組合員に分配すべき利益又は負担させるべき損失・・・」とあり、匿名組合契約において税務否認金を匿名組合員に分配する旨を定めていれば分配することができるようにも解釈できますが、この部分は改正の前後で変わっていません。

また、削除された(注)ですが、内容的には先に述べたように寄付金又は交際費支出時の損金不算入額の計算方法として、任意組合で純額法を用いた場合の計算方法を準用すべき旨を規定したもので、税務否認金の分配の可否を規定したものではありませんでした。

ご存知のように、任意組合はそれ自体法人格を持っていませんから、純額法を用いた場合に寄付金又は交際費支出時の損金不算入額を計算しようとすると、組合を何らかの法人とみなすのは課税技術上必要であると思われます。

ところが、匿名組合においては課税対象となる営業者が存在していることから、組合自体を何か別の法人とみなす必要性はないと思われ、(注)が削除されたのも本来不要であった課税技術上の取扱いが削除されただけであり、分配するという点はそのままなのかも知れません。

以上のように解釈しますと、営業者で生じた税務否認金を出資者である組合員に分配するのは従前どおり可能であると考えられますが、税務否認金の分配について触れられていた唯一の規定が削除されたのもまた事実であり、分配すること自体否定されたとも考えられることから、税務リスクの存在は否定できません。

2006年4月28日(担当:中村 敬)

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