2006年2月24日

DES(デット・エクイティ・スワップ)に係る債務消滅益は課税対象に

DESを行った場合の債権者側の課税関係は法人税基本通達2-3-14により明らかでしたが、債務者側の課税関係を明示した法令・通達等はありませんでした。国税OBも含めて識者によると専ら「資本等取引なので債務消滅益課税はない」と説明され、当局の事前相談窓口でも一定の条件のもとに券面額説に基づく債務消滅益を認識しない処理が認められていました。

ところが平成18年度税制改正において、DESに伴い増加する債務者の資本等の金額はDESの対象となる債権の債権者における時価とされることが明確になりました。つまり債務金額と債権時価との差額は債務消滅益として課税されるということです。

これは、債務者にとっての債務の時価は券面額説に基づく債務金額であり、債権者の債権時価とは一致しなくても構わないとする従来の認識を変えるものです。具体的には下記の税制改正大綱に基づく改正と説明されていますが、次の文言からDESに係る債務消滅益課税を推測するのは至難の業です。

「株式の発行等により増加するその発行等をした法人の資本等の金額は、払い込まれた金銭の額及び給付を受けた金銭以外の資産の価額とする。」

大綱によるとこの改正は、「会社法の施行の日以後に発行の決議等がされる株式の発行等について適用する。」とされています。常識的に考えるとDESの債務消滅益課税は会社法施行日以後と理解されますが、そもそも債務者側の課税関係を明記したものがなかったわけですから、会社法施行日前におけるDESについても債務消滅益課税される可能性を完全に否定することはできません。

この改正に対応して、債務消滅益と期限切れ繰越欠損金を相殺できるように法人税法59条(会社更生等による債務免除益等があった場合の欠損金の損金算入)が改正される予定ですが、この特例の適用を受けるためには諸要件を充足する必要があり、債務消滅益との相殺が常に可能なわけではありません。また、そもそも繰越欠損金がなければストレートに課税されてしまいます。

従来、企業再生において債務免除益課税を避ける手法として頻繁に活用されたDESですが、税務上の取扱いが変わった(明確になった?)ことで利用頻度は大幅に減少するものと考えられます。

2006年2月24日(担当:平野和俊)

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