2004年10月25日

外国企業によるM&A(三角合併)の規制緩和が国内組織再編に与える影響

新聞報道によると、外国企業が日本企業を傘下に収める際、外国企業との直接的な国際株式交換を行うことを認めず、そのかわり、対価として日本子会社を通じた外国株の譲渡を認める方針を固めました(日本経済新聞2004年10月7日)。

新たに導入される「外国企業が日本企業を買収する仕組み」は、「三角合併」と呼ばれる手法で、具体的には、以下の手順でM&Aが行われます。

1.日本企業B社を買収する外国上場企業A社が日本子会社a社を設立する。
2.a社にA社株式(親会社株式)を取得させる。
3.a社と日本企業B社が合併し、B社の株主は、対価としてA社株式の割当をうける。
米国の実務では2を省略し、直接A社がB社株主に対してA社株式を割り当てることが多くなっています。一種の擬制ですが、日本でそこまで認められると、実質的に国際株式交換が実現することになります。

この新しい手法には、税制上の問題があり、現行税制のままでは利用されないだろうと指摘されていました。

法形式上、「三角合併」は合併です。従来の合併と異なるのは、合併対価として合併法人(B社)の株式を交付するのではなく、外国親会社(A社)の株式を交付することです。

ところで、外国親会社株式の交付は、適格合併の要件を満たしません。なぜなら、現行の合併税制(組織再編税制)上、適格合併として認められるのは、「合併法人の株式」が対価として交付される場合だけであり、その他の資産を交付すると非適格合併になるからです。非適格合併に該当すると、B社はその有する資産負債を時価でa社に譲渡して、その対価として受け取った外国親会社A社株式を、会社清算に伴う残余財産の分配としてB社株主に交付したとされ(法法62)、日本のB社株主には、「みなし配当課税」と「株式譲渡益課税」が生じます。日本株主に重い税負担が生ずるため、今のままでは誰も新制度を利用しないだろうと予想されています。

以上から、合併の適格要件を見直し、外国親会社の株式を対価として交付する場合も適格として認める旨の税制改正を行えば、新制度における租税上の障害は取り除かれることになります。

財務省は、商法改正に足並みをそろえ、2006年度税制改正に、「日本企業の株主が外国企業株を受け取った場合に課税を猶予し、外国企業株を実際に売却した時点で課税する」という対応策を盛り込むことを決めました(日本経済新聞2004年10月19日)。

ここで気になるのは、自社株を買収資金の代わりに使う「株式交換型M&A」の課税関係を見直すと報道されていることです。株式交換税制は、組織再編税制と別個に規定されており、株式交換後に組織再編をすると適格要件を簡単に満たすことができるため、組織再編税制の抜け穴になっているといわれています。どうやら、株式交換税制の改正まで財務省はにらんでいる模様で、組織再編における有利な株式交換の活用も2005年までという可能性が強くなってきました。

2004年10月25日(担当:後 宏治)

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