信託の残余財産である宅地等に小規模宅地等の特例は適用できるのか
小規模宅地等の特例対象となる宅地等は、相続や遺贈により取得することが要件の一つです。そのため、信託財産となった宅地等を信託契約等により取得した場合には、相続・遺贈によって取得したというみなし規定がないと、この特例の適用要件を満たさないことになります。
相続税法では、信託の受益権を取得した者は、その信託の信託財産である宅地等を遺贈等により取得・承継したものとみなされます(相法9の2⑥)。ただし、このみなし規定は、信託が存続したまま相続人が受益者等となるなどの場合にのみ(相法9の2①~③)に適用され、信託が終了した場合においてその信託の残余財産である宅地等が給付されたり帰属したりしたときには適用されません(相法9の2④、⑥)。
小規模宅地等の特例では、上記の相続税法のみなし規定(相法9の2⑥)を準用しているので(措令40の2㉗)、信託財産に宅地等が含まれる受益権を相続したなどの場合には、この特例の適用対象となります(措通69の4-2)。しかし、被相続人の死亡により信託が終了した場合に取得した宅地等は、法令を素直に読むと、適用対象とはなりません。
このように、委託者・受益者である被相続人の死亡を原因として信託が終了したときに取得した宅地等について、小規模宅地の特例が適用可能か否かははっきりしていませんでした。
ところが、最新の措置法通達の逐条解説において、こうした宅地等にもこの特例の適用ができる旨が明示されました。すなわち、同書の旧版にはなかった「なお、相続税法第9条の2第4項の残余財産には、特例適用宅地等が含まれえることに留意する※1」というコメントが新たに追加され、国税庁の解釈が明らかになったのです。
なお、同解説には「含まれえる」とあり「含まれる」とは記載されていないため、その適用範囲は明確ではありません。納税者が有利となる課税庁による法令解釈は歓迎すべきところですが、予測可能性を確保する観点から、この結論に至る解釈理由と適用範囲の限界を公開すべきであると思います。

※1甲斐裕也 (編)『相続税・贈与税関係 租税特別措置法通達逐条解説 令和7年版』64頁(大蔵財務協会、2025)
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