貸付用不動産の評価方法の見直し~令和8年税制改正大綱より~
不動産購入による相続税節税スキームに対しては、令和6年からマンション通達が適用されて、区分所有マンションの評価適正化(時価の6割水準での評価)が図られましたが、一等地のマンション評価額は依然として時価の5割未満という状態にあり、相続税節税目的の不動産購入が減ったとは思えません。またそもそも、一棟所有の賃貸マンションや事業用ビルは同通達の適用対象外となっています。
このような節税スキームに対して国税当局は、評価通達6項※1に基づく課税処分を増加させており、その判断基準は「実質的な租税負担の公平に反する事情(令和4年最高裁判決)」とされているものの、具体的ではなく、何らかの対応が求められていました。
令和8年度税制改正では、被相続人・贈与者が相続開始・贈与前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産については、通常の取引価額に相当する金額(課税上の弊害がない限り、取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の8割相当で評価できる)によって評価することとされ、令和9年1月1日以後の相続・贈与から適用されることとなりました※2(令和8年度税制改正大綱、自民党税制調査会資料)。
この改正について、今後注視すべき事項は下記の通りです。
1. 「一定の貸付用不動産」はどのように定義されるのか。同族関係者に対する貸付用も対象になるのか。
2. 非上場会社の純資産価額を算定する場合において、課税時期前3年以内に取得等した不動産の評価は通常の取引価額によるとされているが、本改正により5年以内と改正されるのだろうか。あるいは、3年超5年以内の貸付用不動産の取得等について、本改正と同様に取得価額8割評価とされるのだろうか。
3. 貸付用不動産でない不動産(セカンドハウス、別荘、月極駐車場利用土地、未利用地など?)の5年以内取得について、評価通達6項が適用される可能性はどのくらいあるだろうか。
4. 取得等から5年経過した直後に贈与する場合において、評価通達6項が適用される可能性はどのくらいあるだろうか。

※1 この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する(財産評価基本通達総則6項)。
※2 但し、通達改正日までに被相続人・贈与者が同日の5年前から所有している土地の上に家屋を新築・建築中の場合には、従前通り評価する。
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