2025年5月30日

定期借地権の相続税評価が自用地評価より高い!?

 定期借地権の相続税評価額は、原則として課税時期において借地権者に帰属する経済的利益及びその存続期間を基として評定しますが、課税上弊害がない限り、下記の算式によって評価することが認められており、実務上はこの算式によって評価されています(評基通27-2)。

(算式)
 自用地評価額 × 権利金等の額 ÷ 設定時自用地時価 × 残存期間に対応した逓減率

 ここで、設定時自用地時価が簡便的に自用地相続税評価額÷0.8で算定されることから、例えば下記のように時価と相続税評価額に乖離がある都心などの定期借地権評価額において、自用地評価額を上回るという事例が出てきています。

<前提>
 所有権マンションであれば自用地時価1億円する新築の定期借地権付きマンションを権利金6千万円で購入

  定期借地権設定時の自用地の相続税評価額    4千万円
  定期借地権設定時の自用地時価※1         5千万円(4千万円÷0.8)

<定期借地権設定時の相続税評価額>
 本来、4千万円×6千万円÷1億円=2.4千万円と算定するべきですが、この1億円という自用地時価は実務では分からないため、簡便法により4千万円×6千万円÷5千万円=4.8千万円と、自用地評価額よりも高く評価されます。

 この評価額はあまりにも理不尽なため、実務上は課税時期の更地評価額を上限として、又は、権利金等の経済的利益の額を設定時の自用地時価として評価しているものと推測されます。

 しかしながら、上記簡便法における「自用地評価額」を「設定時相続税評価額×路線価増減率」とした上で数式を入れ替えると、

(算式)
 権利金等の額 × 設定時相続税評価額 ÷ 設定時自用地時価 × 路線価増減率 × 残存期間に対応した逓減率

となり、権利金等の額に設定時相続税評価水準(設定時相続税評価額÷設定時自用地時価)、路線価増減率及び残存期間に対応した逓減率を乗じていることが分かります。

 正確な設定時相続税評価水準を算出することは困難ですが、対象不動産が居住用マンションであれば区分所有補正率を定める個別通達※2により算定される「評価水準」による方法も一定の合理性を有すると考えられます。同「評価水準」は正に、マンションの相続税評価額を適正化するために国税庁が「相続税評価額÷市場価格理論値」として定めたものだからです。

 例えば、上記事例において同個別通達の「評価水準」が0.5の場合における定期借地権の設定時の相続税評価額は6千万円×0.5=3千万円と算出されます。

 簡便法により定期借地権の相続税評価額が自用地評価額を上回る場合には、このような方法が認められる可能性はあるのではないでしょうか。

2025年5月30日 (担当:平野和俊)

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※1 現実の時価1億円ではなくて、簡便的に自用地相続税評価額÷0.8で算定される評価上の時価という意味です。
※2 令和5年9月 28 日付課評2-74 ほか1課共同「居住用の区分所有財産の評価について」(法令解釈通達)

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