2023年2月 9日

令和5年度税制改正で導入される「超富裕層課税※1」の具体的な対象は?

 いわゆる「1億円の壁」問題をきっかけにして、令和5年度税制改正により超富裕層への追加的な課税措置が導入されます。

 具体的には、各種所得を合算した所得金額から特別控除額(3.3億円)を控除した金額に22.5%の税率を乗じた金額が、納めるべき所得税の金額を超過した場合、超過した差額を追加的に納税するという措置です。

 新聞報道によると、所得が年30億円を超えるような年200~300人ほどが対象とされていましたが、この年所得30億円超という目安は本当なのでしょうか。また課税最低限は具体的にいくらなのでしょうか。

 まず、所得税分離課税のうち、代表的なものである株式譲渡所得、そして土地建物の長期譲渡所得ともに一律に税率15%となりますので、常に22.5%を下回ることから高額になるほど上乗せ税額を発生させます※2。次に、所得税総合課税の累進税率を見ると、分離課税の税率15%を下回る税率が適用される課税所得は330万円以下の場合ですから、330万円が上乗せ税額を分離課税よりも低額で発生させる課税所得の最高額となります。

 これに基づき計算すると、総合課税所得が330万円、株式などの分離課税所得が約9億8,300万円の時に、算出される所得税額と22.5%相当額が一致することから、この合計額約9億8,600万円を超えると上乗せ税額が発生することとなります。

 つまり、総合課税の所得金額が低い場合には、10億円程度の分離課税所得によっても上乗せ税額が発生するということです。10億円という金額は決して低い金額ではありませんが、M&A等で多額の分離課税所得が発生する場合には気をつける必要があります。

2023年2月9日 (担当:平野和俊)

1

※1 税制改正大綱では、「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化」と表現されています。

※2 優良住宅地譲渡の軽減税率、10年超所有軽減税率、退職所得、山林所得などの分離課税は考慮しないこととします。


ページトップへ