2022年8月22日

年収300万円以下の副業は事業所得ではなく雑所得に

 国税庁は令和4年8月1日付けで、雑所得の範囲を明確化する所得税基本通達の改正案について意見公募(パブリックコメント)を実施しています。最近広がりを見せる副業(シェアリングエコノミーやギグエコノミー)の所得区分(事業所得or雑所得)について明確な基準がなく、事業規模ではない副業を事業所得として確定申告して、その赤字を給与所得等と損益通算する節税策の横行を問題視したものと考えられます。

 具体的な改正内容は、事業所得と業務に係る雑所得の判定について、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証がない限り業務に係る雑所得として取り扱うというものです(令和4年分所得税から適用)。従来は判例等により、精神的・肉体的労力の程度、職業・経歴・社会的地位、収益安定性などを総合勘案して決定するとされていましたが、通達改正後は副業の収入が300万円以下であれば原則として雑所得となります。一方、副業の収入が300万円を超えれば無条件に事業所得になるわけではありません。従来同様「社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する」こととなります。

 ところで、今回の300万円基準は全ての副業に係る「事業所得と業務に係る雑所得」の判定基準となるのでしょうか?例えば競走馬の保有に係る所得が事業所得に該当するかどうかは、所得税基本通達27-7において判定されていますが、同通達と改正後通達35-2の関係がよく分かりません。また、太陽光発電設備による全量売電に係る所得区分は、資源エネルギー庁のグリーン投資減税に係るホームページ(現在は閉鎖)に記載されていた独自の解釈によって判定されていた実務がありましたが、同様に300万円基準が適用されるのでしょうか。

意見公募を踏まえて、より明確な通達改正が発遣されることが望まれます。

2022年8月22日 (担当:平野和俊)

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