2021年8月 3日

直前期末の資本金等の額がマイナス 類似業種比準価額はどうなる?

 直前期末の資本金等の額がマイナスとなった場合の類似業種比準価額の計算方法について、財産評価基本通達では特に何も触れられておりませんので、各比準要素はマイナスのまま計算することになると考えられます。

 これは、プラスの配当、利益、純資産は、マイナスの発行済株式数※1で除することによりマイナスとなりますが、その結果算出されたマイナスの株価に、同じ資本金等の額を基として計算したマイナスの「1株当たりの資本金等の額の50円に対する倍率」を乗ずることにより約分され、結果として適正な評価額が算出されるからです※2

 ところが、評価明細書の記載方法を定めた評価明細書通達※3を確認すると、資本金等の額がマイナスになった場合の取扱いについての記載はないものの、「1株当たりの年利益金額」と「1株当たりの純資産価額」がマイナスのときはそれぞれの金額をゼロとする、と記載されています。これらは、そもそも利益や純資産がマイナスの場合には、それぞれの比準要素をゼロとして計算するという財産評価基本通達183(2)及び(3)の定めを表現したものと考えられますが、同通達では発行済株式数で除する前の金額がマイナスの場合にゼロとすると定めているだけで、発行済株式数で除した後の金額である「1株当たりの年利益金額」や「1株当たりの純資産価額」がマイナスになった際の取扱いを定めたものではありません。

 実際この点について、大阪国税局資産評価官は「資産課税関係 誤りやすい事例」として、資本金等の額がマイナスの場合には、評価明細書通達の定めにかかわらず、「比準要素等の金額の計算」及び「比準割合の計算」は、マイナスのまま計算することを明らかにしています。

 このように評価明細書通達は資本金等の額がマイナスの場合における取扱いに対応したものとなっていないため、早急に改正されることを望みます。

2021年8月3日 (担当:桑田洋崇)

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※1 1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の発行済株式数のことをいい、直前期末における資本金等の額を50円で除して計算されます。

※2 平成18年12月22日「財産評価基本通達の一部改正について」通達等のあらましについて(情報)

※3 平成2年12月27日付直評23ほか1課共同「相続税及び贈与税における取引相場のない株式等の評価明細書の様式及び記載方法等について」

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