2020年8月28日

発電事業者に対する事業税の改正に伴う影響の考察

 2020年4月1日以後開始事業年度より、電気供給業の内、発電・小売電気事業に係る法人事業税の課税方式が改正されます。ここ数年の太陽光発電を中心とした自然エネルギーブームにより、発電事業者となっている法人も多いと思いますので、これらの法人に今回の改正が与える影響を(資本金1億円以下の普通法人等に限定して※1)考察します。

 改正の内容は次の通りです。

 発電事業に係る法人事業税の計算が従前の収入割のみ※2から、2020年度よりその一部が所得割に代替されます。新たに導入された所得割と収入割の税率引き下げ額から逆算すると「収入割の対象となる収入」に対する「所得割の対象となる所得」の比率(以下では「収入所得比率」と呼びます。)が約13.5%を超えると現行の計算方法よりも増税、下回ると減税ということになります※3

 匿名組合契約に基づく出資を受けて発電事業を行うようないわゆるファンドの営業者である法人では、利益の大半が投資家へ分配され、その分配額が損金となる結果、所得割の対象となる所得がほとんど発生しません。つまり、多くのファンドでは収入所得比率がほぼゼロになることから法人事業税の減少が見込まれます。一方、純粋に自社での収益を目的として発電事業を行う法人では、収入額が変わらないとした場合、収入所得比率が約13.5%を超えれば超える程、つまり収益力の高い発電事業者ほど増税ということになります。多くの発電事業者では、固定価格買取制度の恩恵を受けて収益力が非常に高くなっているので、増税となるケースがほとんどになると予想されます。その他に考えられる影響として、高収益の発電設備を固定価格買取制度の適用期間途中で売却するようなケースにおいて、収入割の計算上固定資産の売却収入は控除されるため、これまではいくらで売却したとしても法人事業税は発生しませんでしたが、今後は発電設備等の売却益が生じた場合には、所得割部分について法人事業税が発生することになりますので注意が必要です。

2020年8月28日 (担当:吉田暁弘)


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※1 資本金1億円を超える普通法人についても法人事業税の計算の一部に外形標準課税が導入される改正が行われていますが、簡素化のため割愛しております。

※2 発電事業に係る売上高が主たる事業の1割程度以下等の条件に該当する場合は、収入割ではなく所得割のみによって課税されます。

※3 超過課税、不均一課税、繰越欠損金額がある場合等は考慮していません。

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