2017年4月 6日

当社も大企業の仲間入り?~取引相場のない株式評価の見直し~

 平成29年度の税制改正では、相続税における取引相場のない株式の評価の見直しが盛り込まれ、平成29年3月1日に改正内容の具体案が明らかになりました。今回の改正内容は①類似業種比準方式の見直し、②評価会社の規模区分の金額等の見直しと大きく2つに分かれますが、ここでは後者について取り上げます。

 取引相場のない株式の評価は、事業内容が類似する上場会社の株価との比較により計算する「類似業種比準方式(以下「類似方式」と呼びます。)」と、会社の純資産をベースに計算する「純資産価額方式」(以下「純資産方式」と呼びます。)により計算し、会社の規模に応じて両方式を併用して次のように計算します。


類:類似業種比準方式 純:純資産価額方式 類○%、純●%:類×○%+純●%で計算した株価

 会社規模が大きくなるほど「類似方式」の採用割合が増加し、一般的に「類似方式」の方が「純資産方式」よりも株価が低く計算されることから、会社規模が大きい程株価が低くなりやすい傾向があります。

 そこで今回の改正ですが、この会社規模の判定におけるバーを総じて下げる方向に改正されます※。ここでは、会社規模の判定の仕方について詳しくは触れませんが、改正により大会社、中会社のバーがかなり大きく引き下げられています。中でも注目したいのが、取引金額による基準です。大会社に区分されるバーが、卸売業では80億円以上から30億円以上と60%以上も引き下げられる他、中会社の各区分のバーは軒並み従前の半分以下に引き下げられ、一例として売上高5億円の小売業の場合、これまでの基準では中(0.6)の区分であったものが、中(0.9)へと2段階会社規模が大きくなります。他にも総資産に比べて増やすことの難しい従業員数の基準も大きく引き下がっていますので、要注目です。

 今回取り上げなかった①の改正と合わせて、取引相場のない株式の評価額は昨年までと大きく変わる可能性があります。会社規模区分の引き上げによる株価の引き下げは相続税対策としても有効ですので、合併による会社規模の拡大等も検討する価値が出てくるかもしれません。企業オーナーは新しい評価方法による自社株式の評価がどうなるかを是非確認しておきたいところです。

※財産評価基本通達新旧対照表(案)178、179

2017年4月6日 (担当:吉田 暁弘)

 

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