2017年2月13日

会計検査院が問題視した国外中古建物の減価償却費

 少し前の話となりますが、会計検査院は平成28年11月7日に公表した「平成27年度決算検査報告」において、国外中古建物を利用した個人所得税の「節税策」を問題視し、財務省に対して税制改正の検討を促しました。

 具体的には、多額の給与などがある個人が、主として米国で木造中古建物を購入します(同報告におけるサンプル調査では国外建物の64%が米国所在)。日本の確定申告で計上できる減価償却費は、中古建物であれば国内外を問わず簡便法による耐用年数の計算が認められ、法定耐用年数を経過した木造中古建物の耐用年数は4年となります(同報告におけるサンプル調査では国外中古建物の約半数の耐用年数が4年)。多額の減価償却費を計上した不動産所得は赤字となり、これを給与所得などと通算して、節税になるというからくりです。

 そして、単なる減価償却費の前倒し計上であれは課税繰延効果しかないわけですが、これを5年経過後に譲渡すれば総合課税よりも低い税率の分離課税負担で済み、また、減価償却費の前倒し計上が終わった後で出国して非居住者となれば、以後日本において所得税の申告義務はなくなります。

 それでは、この会計検査院報告を受けて、税制改正を行うとしたらどのような改正内容となるのでしょうか。まったくの私見ですが、下記の方法が考えられます。

① 国外中古建物の耐用年数算定において、簡便法は認められない。法定耐用年数又は見積法(個々の建物の使用可能期間を実態に応じて見積もる)によらなければならない。

② 不動産所得が赤字でも、国外建物の減価償却費は損益通算の対象とならない。

 会計検査院の指摘が税制改正につながることは多いですから、平成30年度税制改正を注視したいものです。

2017年2月13日 (担当:平野和俊)

 

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