ほとんど下がらなかった中小法人の実効税率~平成28年度税制改正より~
「法人実効税率が29%台に!」という平成28年度税制改正記事を見て、にっこりされた中小企業経営者の方も多かったのではないでしょうか。しかし残念ながら法人実効税率が29%台に下がるのは、大法人に適用される外形標準課税(事業税)の引上げとバーターですから、その恩恵を受けるのは資本金が1億円を超える大法人に限られます。資本金が1億円以下の中小法人の実効税率はほとんど下がりません。東京都の中小法人で具体的に計算してみると、下表の通り年所得800万円超部分の実効税率が、平成28年度で0.54%下がって34.81%、平成30年度で更に0.22%下がって34.59%と「ほんの少し下がる」というのが実態です。年所得800万円以下部分の実効税率は変わりません。
また、国税及び地方税トータルの税負担はほとんど変わらないものの、平成29年度から国税の税率は上がり、地方税の税率は下がります。年所得800万円超部分に対する国税(法人税&地方法人税)の合計税率は平成28年度で24.43%となりますが、平成29年度で25.81%(1.38%増加)、平成30年度で25.59%(平成28年度から1.16%増加)となります。法人税だけが課税される支店等のない外国法人にとっては若干の増税となります。また、欠損金の繰戻還付を受ける法人にとってはささやかな朗報となります。
<東京都中小法人の実効税率>
所得金額 | 平27.4.1~平28.3.31 開始事業年度 |
平28.4.1~平29.3.31 開始事業年度 |
平29.4.1~平30.3.31 開始事業年度 |
平30.4.1以後 開始事業年度 |
---|---|---|---|---|
400万円以下 | 22.09% (国税15.66%) | 22.09% (国税16.55%) | ||
400~800万円 | 23.93% (国税15.66%) | 23.93% (国税16.55%) | ||
800万円超 | 35.35% (国税24.95%) |
34.81%
(▲0.54%) (国税24.43%) |
34.81%
(国税25.81%) |
34.59%
(▲0.22%) (国税25.59%) |
(注1) 法人税は、資本金1億円以下の中小法人(資本金5億円以上である法人等による完全支配関係がある法人を除く。)に適用される税率とする。
(注2) 都民税法人税割は、23区内に事務所が有り、かつ法人税額が年1,000万円超の法人に適用される税率とする。
(注3) 法人事業税は、年所得が2,500万円超の法人(軽減税率不適用法人を除く)に適用される税率とする。
(注4) 中小法人の年所得800万円以下部分に対応する法人税の軽減税率を15%とする特例が平成29年度以後も継続することを前提とする。
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