2015年8月17日

ビットコインと消費税

 ビットコインに代表される仮想通貨について、法令等で課税上の取扱いが明確にされたものは現時点で存在しません。そもそも「仮想通貨」とは何なのか、という法的位置づけですら明確になっていませんので、「いわんや税法をや。」です。

 そんな状況において、数少ない拠り所とされているのが、2014年6月19日に自民党IT戦略特命委員会から公表された「ビットコインをはじめとする「価値記録」への対応に関する中間報告」です。この中間報告においては、ビットコインなどの仮想通貨を、「通貨でも物でもない、新たな分類に属する価値記録(価値を持つ電磁的記録)」であると定義した上で、通貨と価値記録、価値記録と物・サービスの交換は消費行為に該当して消費税を課税するとしています。中間報告ではこれ以上の説明はありませんので、私なりにこの課税方針をベースにした現行消費税法に照らした具体的取扱いを下記のように推論してみました※1

取引内容 日本法人の消費税の取扱い
(推論)
1.日本法人が日本のビットコイン販売
  会社から10万円分のビットコインを
  購入(または売却)した。
ビットコインの購入は10万円の課税仕入
ビットコインの売却は10万円の課税売上
2.日本法人が海外のビットコイン販売
  会社から10万円分のビットコインを
  購入(または売却)した。
ビットコインの購入は消費税の課税対象外
ビットコインの売却は10万円の課税売上
(輸出免税の適用はない※2
3.日本法人が10万円の備品購入に
  あたり10万円分のビットコインを
  を送付した。
備品の購入は10万円の課税仕入
ビットコインの送付は10万円の課税売上
4.日本法人が10万円の備品売却に
  あたり他の日本法人から10万円
  分のビットコインを受領した。
備品の売却は10万円の課税売上
ビットコインの受領は10万円の課税仕入
5.日本法人が10万円の備品売却
  (輸出)にあたり外国法人から10万
  円分のビットコインを受領した。
備品の売却は10万円の輸出免税
ビットコインの受領は消費税の課税対象外

 現行の消費税法を前提とすれば、中間報告にあるようにビットコインを課税対象とする方針は分からないでもありません。しかし、上記のような取扱いは「仮想通貨」の取引実態からは違和感があります。やはり明確な法令整備が必要ではないでしょうか。

2015年8月17日 (担当:平野 和俊)

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※1 ビットコイン譲渡者の事務所等が日本にあれば国内取引、ビットコイン譲渡者の事務所等が国外にあれば国外取引(消費税の課税対象外)とすることを前提としていますが、もちろんこの取扱いも明確ではありません。

※2 現行の消費税法において仮想通貨の非居住者への譲渡を輸出免税の対象とする規定はありません。

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