株式投資は個人で? それとも、法人で?
同族会社のオーナーが、株式投資をする場合、個人と法人どちらで投資したほうが税務上有利になるのでしょうか。
平成25年では個人の上場株式等の配当所得及び株式譲渡所得に対する税率は10%(所得税7%+住民税3%)であったのに対し、法人の実効税率は約37%であり、税率で約27%の開きがありました。単純に税率で比較するだけでも、昨年までは個人の方が圧倒的に有利でした。
ところが、平成26年では個人の上場株式等の配当所得及び株式譲渡所得に対する税率は20%に引き上げられ、一方で、少額投資非課税制度(NISA)が導入されています。
なお、平成27年度の税制改正において、少額投資非課税制度(NISA)の非課税枠を現状の年100万円から拡大する方向で検討されており、また、法人の実効税率は20%台後半に引き下げる方向で検討されているようです。
では、このような環境下において、個人と法人でどちらが有利なのでしょうか。
<ケース1> 投資額がNISA非課税枠の範囲内である場合
この場合は、NISAを活用すれば、配当及び売却益の全てが非課税となるため、個人で投資をしたほうが有利です。
<ケース2> 投資額がNISA非課税枠を超える場合
この場合は、税率で比較することころ、個人の税率が20%であるのに対し、法人の実効税率は予想通り引き下げられたとしてもまだ20%台後半にしかならないことを考えると、法人所有では税率で約10%分のデメリットが生じることになるため、依然として個人で投資をしたほうが有利です。
では、法人で投資するメリットはあるのでしょうか。1つめは、損益の通算です。個人は株式譲渡損益同士の相殺と上場株式等の配当所得との相殺であるのに対し、法人では株式譲渡益と単年度の損金又は繰越欠損金との相殺や、株式譲渡損と単年度の益金との相殺が可能です。2つめは、相続税対策です。平成27年1月1日以降の相続については、基礎控除額が縮小し、相続税の課税が強化されます。法人で上場株式を取得しておけば、保有会社株式の評価において、1株当たりの純資産価額の計算で法人税相当額を控除することができ、また、類似業種比準価額を採用することもできるため、相続税評価額が個人で取得している場合よりも通常はかなり下がります。
つまり、法人所有の場合では、損益の通算が可能で、相続税評価額が下がるというメリットと、税率に開きがあるというデメリットを比較して、個人所有と法人所有のどちらが有利かを検討することになります。
かつては、この税率差が約27%でした。ところが、税制改正により、この税率差が1/3程度に縮小されます。今こそ、法人での投資を検討する時期なのかもしれません。
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