2014年6月23日

所得拡大促進税制は使用人兼務役員に注意

 平成25年度税制改正で創設された「雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」(以下「所得拡大促進税制」といいます。)は、雇用者給与等支給額について3つの要件※1を満たせば雇用者給与等支給増加額の10%を税額控除ができるという制度です。平成26年度税制改正による要件の緩和※2に加え、景気の回復や労働需給の引き締まりに伴う賃金の上昇もあり、特に意識はしていなくても結果的にこの制度の適用対象となっていたというケースも多く見られます。この税額控除の良いところは、3つの要件を満たした場合に基準事業年度(・・・・・・)(平成25年4月1日以後最初に開始した事業年度の直前事業年度)と比較した雇用者給与等支給増加額の10%の控除を受けられる点にあります。例えば適用初年度には大幅に賃金が上昇したものの、2年目は賃金の伸びが初年度に比べてわずかにとどまったという場合であっても、3つの要件さえ満たせば、税額控除の対象となる雇用者給与等支給増加額を計算する基準は給与額が大きく増加した適用初年度ではなくその前事業年度の支給額となりますので、2年目においても初年度と同等額以上の税額控除が受けられます※3

 この所得拡大促進税制は法人の国内事業所に勤務する使用人に対する給与を対象としていることから役員給与は含まれないのですが、使用人兼務役員については使用人部分の給与も含めて給与の全額が計算の対象外となる点には注意が必要です。例えば、次のようなケースでは、経理部長であるA氏が使用人兼務役員となったことにより、会社としては雇用者給与を上げたつもりにもかかわらず所得拡大促進税制の適用対象外という結果となってしまいます。

 制度上の割り切りで使用人兼務役員については一律除外となってしまったのでしょうが、給与を払っている側の実感覚とはずれた結果となってしまうため、使用人兼務役員の使用人部分の給与を計算対象に含める、あるいは、基準事業年度後に役員又は使用人兼務役員となった者に対して基準事業年度中に支払った給与額は計算の基礎から除外するといった取扱いを設けてほしいものです。

2014年6月23日 (担当:吉田暁弘)

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※1 要件1:給与等支給額の総額:基準事業年度(平成25年4月1日以後最初に開始した事業年度の直前事業年度)比2~5%以上の増加

  要件2:給与等支給額の総額:前事業年度以上

  要件3:平均給与等支給額:前事業年度を上回る

※2 ※1の要件1が当初の基準事業年度比5%以上から適用事業年度に応じて2~5%以上に緩和され、適用期間が2年延長される等の改正が行われました。

※3 税額控除限度額(大法人は法人税額の10%、中小企業者等は法人税額の20%)によっては下回ることもあります。

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