2014年5月30日

PEを有しない外国法人に対する地方法人税の影響

 平成26年度より法人課税につき、以下の改正が行われます。

① 復興特別法人税の廃止
復興特別法人税の課税期間が1年間前倒しで終了します。従って、平成26年4月1日以後に開始する事業年度は税負担が減少します。

② 地方法人課税の偏在是正
地方自治体間の財政力格差縮小を目的として、地方法人税が新設され、また事業税(地方法人特別税含む)の税率が変わります。地方法人課税の偏在是正を目的としているため、この改正に伴う法人の税負担はほとんど影響を受けません(法定実効税率が変わりません)。地方法人税は現在の法人住民税法人税割の一部を国税化したものとなります。納税義務者は法人税を納める義務がある法人で、その課税標準は各事業年度の基準法人税額となります。この改正は、平成26年10月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

 以上のことから①、及び②の改正の結果、内国法人の平成26年4月1日以後に開始する事業年度については税負担が減少することとなります(表1参照)。

 しかし一定の外国法人については、単純に税負担が減少するとはいかないようです。

 外国法人の課税関係は、日本国内に恒久的施設※1(以下、PEという。)を有するかどうかで異なります。PEを有しない外国法人の各事業年度の所得に対する法人税の課税範囲は、国内資産の運用又は保有に係る所得、国内不動産の譲渡による所得その他一定の国内源泉所得であり法人税の納税義務はあります。しかし地方税については、国内にPEを有しないことから納税義務はありません。今回新設された地方法人税は、名称に「地方」という文言はつきますが、納税義務者は法人税を納める義務がある法人であり、PEを有しない外国法人であっても納税する必要があります。

 従って、地方法人税の新設により法人住民税法人税割の税率が引き下げられたとしても、税負担は増すこととなります。②の改正の適用は、平成26年10月1日以後に開始する事業年度であることから、平成26年4月1日~平成26年9月30日までに開始する事業年度においては①の改正の適用を受け税負担は減少しますが、その翌事業年度は②の改正の影響を受けるため税負担は増加します(表2参照)。

 このようにPEを有しない外国法人については今回の改正により税負担が増す可能性があります。外国法人に対する課税については総合主義から帰属主義へとその課税方式の変更も予定されています(平成28年4月1日以後に開始する事業年度から適用)。日本への投資を考えている外国法人には今回の改正を踏まえることはもちろんのこと、帰属主義へ課税方式が変更した場合も念頭に将来のタックスプランニングを提案することが必要です。

 <表1:法人所得課税の法定実効税率(改正前後比較)>
※年間所得金額800万円超の資本金1億円以下の普通法人(3月決算)、
地方税は標準税率を想定

 <表2:PEを有しない外国法人所得課税の実効税率(改正前後比較)>
※年間所得金額800万円超の資本金1億円以下の普通法人(3月決算)、
地方税は課税されない想定

2014年5月30日 (担当:上田悟志)

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※1 定義は国税庁ホームページ(タックスアンサー)参照

※2 以下の算式で算出
法定実効税率=(法人税率×(1+復興特別法人税率+地方法人税率+住民税率)+事業税率+事業税率(標準税率)×地方法人特別税率 / (1+事業税率(標準税率)×地方法人特別税率)

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