2012年4月 6日

消費税の税率アップを控えての事前準備

 「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律」が平成24年3月30日に閣議決定され、消費税の増税が現実味を帯びてきました。前回の税率アップ時と比べると、ここ数年来続いている消費税の課税強化と相まって、広範な影響が予想されます。そこで消費税の税率アップに伴う税負担の増加に対してどんな準備をすれば良いのかを考えてみます。

 消費税の税率アップは2段階に渡って行われ、平成26年4月1日から8%、平成27年10月1日からは10%となる予定です。例えば、建物を購入する場合、平成26年3月31日までに購入すれば税率は5%、平成26年4月1日から平成27年9月30日までに購入すれば税率は8%、以後は10%となります。そこで、税率がアップする平成26年3月31日までに建物等の高額の資産の購入を前倒しにすることにより5%の旧税率の適用を受けることができます。

 一方、事務所の賃貸のような継続的な賃貸借契約に係る消費税については、資産の購入のように前倒しで役務の提供を受けておくということはできませんので、平成26年3月分までは5%、平成26年4月分以降は8%、平成27年10月分以降は10%となります。このような賃貸借取引についても旧税率5%の課税で済ませる方法はないのでしょうか。ここで注目したいのが次の経過措置です。平成25年9月30日までに①貸付の期間と対価の額を予め定めた上で、②対価の変更をできないという契約を結んでおけば、平成26年4月以降も5%の税率の適用を受けることができるとされています。したがって、対価の変更ができないことがネックとなりにくい個人から同族会社への建物の貸付のようなケースでは、平成25年9月30日までに長期の賃貸借契約を結んでおくといった対策を採ることで、継続的に5%の適用を受けることができます。

 また、建物の大規模修繕のような工事契約については、原則的には工事が終了した段階で消費税を認識するため、5%の税率の適用を受けるためには、平成26年3月31日までに工事が完了する必要がありますが、貸付のケースと同様経過措置があり、平成25年9月30日までに契約を締結しておけば、平成26年4月1日以後に工事の完了となった場合であっても5%の税率の適用を受けることが可能です※1。したがって、工事を行う予定がある場合には、平成25年9月までに見積もりを依頼し、前倒しで契約をしておくといった対策が考えられます。

 法案の成立までにはまだ紆余曲折があるかもしれませんが、備えあれば憂いなしですので、事前にどんな対策ができるかを今から考えておいても良いのではないでしょうか。

2012年4月6日 (担当:吉田暁弘)

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※1 平成25年10月1日以降に対価の変更があった場合には、変更前の金額部分に限られます。

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