2011年6月 2日

被災者・被災地支援と寄附金控除

 甚大な被害をもたらした東日本大震災の発生より2ヶ月あまりが経ちました。「日本には寄附の文化が根付いていない」といった意見も耳にしますが、この度の震災については非常に多額の寄附金※1が集まっているようです。このレポートでは、「被災者の支援、被災地の復興のために効果的に寄附をしたい」という方のために、個人が寄附をした場合の税制上の優遇措置についてまとめたいと思います。

 個人が寄附をした場合の所得税・住民税の取扱いは、「優遇措置なし」、「所得から差し引ける」(所得控除といいます)、「税額から差し引ける」(税額控除といいます)の3つに分かれます。基本的には、税率をかける対象となる所得をマイナスする所得控除よりも、税率をかけた後の実際の税額をマイナスする税額控除の方が有利です。寄附先・種類により、優遇措置がうけられるかどうか、どのような優遇措置が受けられるかは大きく異なります。震災支援関連で代表的なものをまとめると下表となります。

 このレポートでは計算方法の詳細等は割愛しますが、これらのうち最も効果的なのが、①から④の住民税の税額控除の割増部分があるものです。②がいわゆる「ふるさと納税(ふるさと寄附金)」と言われるもので、①③④は本来ふるさと納税ではないものの、震災特例でふるさと納税として取り扱われます。①から④の寄附金については、寄附した金額が所得に比べて多すぎない限り、5,000円程度の負担で多額の寄附を行うことができます。

 例えば、給与収入が1,000万円で他に所得がない方が、被災した地方公共団体に対し10万円の寄附を行った場合、確定申告を行うことで、所得税が22,600円、住民税が73,200円減額されます。この寄附をお金の流れで見ると、

となります。ところで、この寄附を最終的に誰がいくら負担しているかという視点で見ると、

となり、寄附した方が4,200円(= 100,000円 - 22,600円- 73,200円)だけ負担することで、被災地に10万円の支援が行われることになります ※2。「ふるさと納税」は、個人が自分も被災地に寄附する代わりに、自分の住んでいる地域と国に対しても、被災地への寄附を強制できる制度、といえるかと思います。

 住んでいる地域の税収が減り、公共サービスのレベルが悪化する可能性もありますが、そうであったとしてもこの非常事態に被災者・被災地を支援したいという方は、総務省ホームページの「ふるさと寄付金など個人住民税の寄附金税制」「東日本大震災に係る被災地方公共団体に対する寄付金及び義援金の受入口座一覧」等を参考に、寄附をご検討されてはいかがでしょうか。

 なお、優遇措置を受けられない寄附先もあること、所得控除・税額控除とも控除額には上限があること、確定申告を行わなければならないこと、その際寄附金の受領証や振込票の控えを添付する必要があること等、いくつか注意すべき点があります。寄附をされる際には、寄附先のホームページ等でご確認いただくことをお奨めいたします。

2011年6月3日 (担当:吉岡純男)

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※1 厳密には、地方公共団体等に対する支援を目的とするものを「寄附金」、被災者に対する支援を目的とするものを「義援金」というようですが、本稿では「寄附金」で統一します。

※2 この方の場合、約117,000円までの寄附であれば、実質負担額は5,000円以下となります。なお、平成22年の法令に基づく試算であり、諸条件により実際の金額は変動します。


 

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