2006年4月28日

既存の有限会社SPCは会社法施行後にどうなるか

証券化スキームにおいてSPVとして多様されてきた有限会社ですが、会社法の施行に伴う有限会社法の廃止(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」という)1三)により、会社法施行後は、株式会社として存続する(整備法2)ことになるため、原則として「株式会社」として会社法の規定の適用を受けることになります。

旧有限会社は、旧商法に規定する株式会社とは異なる下記のメリットがあるため、多くの証券化スキームでSPVとして利用されてきました。

1.最低資本金が300万円である(旧有限会社法(以下「旧有法」という)9)
2.取締役が1人でもよい(旧有法25)
3.取締役の任期の期限がない(旧商法256を準用しないため)
4.監査役の設置が任意である(旧有法33-1)
5.商法特例法に規定する会計監査人による監査義務(旧商法特例法2-1)の規定の適用を受けない(旧商法特例法の規定は株式会社を対象とするため)
6.貸借対照表の公告が不要(公告義務規定の不存在)
7.会社更生法の規定の適用を受けない(会社更生法の規定は株式会社を対象とするため:会社更生法1)

もし旧有限会社が上記の原則に従って、株式会社として会社法の規定の適用をそのまま受けなければならないとするならば、上記3.5.6.及び7.といった旧有限会社のメリットが失われることとなるため(会社法328、332、440)、証券化SPVとしての利便性が大きく損なわれることになってしまいます。また、商号に「株式会社」という文字を使用する義務がある(会社法6-2)ことによる商号変更や絶対的記載事項の相違(会社法27各号)による定款の変更が強制されてしまうことになってしまいます。

しかし、整備法により「有限会社」を商号中に引き続き使用する旧有限会社は、特例有限会社として(整備法2-1、3-1,2)、既存の定款の読み替え規定や会社法の規定を一部適用しない旨の規定等の適用を受けることになるため、実質的に旧有限会社とほぼ同様の取扱いを受けることになります。従いまして、現在SPVとして使用されている旧有限会社につきましても、会社法施行後も特段の対応を迫られることはなさそうです。

ただし、整備法には会社更生法の不適用の規定は存在しないため、特例有限会社も会社更生法の適用対象に含まれることになります。会社更生手続以外の再生手続又は清算手続きにおいては担保権は別除権として取扱われるため、担保権を設定している債権者は当該再生手続又は清算手続とは個別的にその権利を行使することができます(民事再生法53-2、破産法2九、同法65)。しかし、会社更生法による更生手続開始の決定があった場合においては、更生計画において優先的な取り扱いこそされるものの(会社更生法168-1,3)、担保権の実行は中止され(会社更生法50-1)、担保権者は更生担保権者として更生手続に取込まれてしまうことになります。その結果、担保権者は個別的な権利行使ができず、更生計画に基づいた弁済しか受けることしかできなくなってしまい、債権の回収に長い時間を要することになってしまいます。

旧有限会社を用いた証券化スキームではSPVの取締役及び社員(中間法人が社員である場合には当該中間法人の理事や監事及び社員)は通常、破産申立権不行使誓約書を提出しており、また主たる債権者はレンダーのみであるが多いことから、実際に会社更生法の適用申請がなされる可能性は低いと考えられますが、もし組織変更に係るコストに見合うだけの必要性があると判断できるのでしたらば、会社更生法の適用を回避するための合同会社への組織変更も検討する価値がありそうです。

※ 整備法の主要な条文番号(証券化SPVと関係が深いものに限る)

・商号に関する特則 第2条
・定款の記載等に関する経過措置 第5条
・社員名簿に関する経過措置 第8条
・株式の譲渡制限の定めに関する特則 第9条
・株主総会以外の機関の設置に関する特則 第17条
・取締役の任期等に関する規定の適用除外 第18条
・計算書類の公告に関する規定の適用除外 第28条
・登記に関する経過措置 第42条

2006年4月28日(担当:石渡 正樹)

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