2021年2月 5日

思わぬ課税に注意!特別寄与とみなし遺贈

 平成30年の民法相続法の改正により、特別寄与制度が創設され、相続人以外の親族が、被相続人の療養看護等を行った場合、一定の要件のもとで、相続人に対して金銭の支払を請求することができるようになりました。

 例として、長男の妻が義理の父(=長男の実父)の介護をしていた場合を考えます。旧民法では、長男の妻は、どんなに被相続人の介護に尽くしても、相続人ではないため、義理の父の死亡に際し、相続財産の分配にあずかれませんでした。しかし、改正後は、相続人(長男・次男・長女等)に対して、金銭の請求をすることができます。この制度を利用すれば、相続人以外の者による介護等の貢献に報いることができ、実質的な公平を図ることが可能となります。

 特別寄与に係る課税関係は次のとおりです。


①特別寄与者(=長男の妻)
 相続人からの特別寄与料の取得に対しては、被相続人(=義理の父)から特別寄与者に対する遺贈とみなし(相法4②)、所得税や贈与税ではなく、相続税が課税されます。
②特別寄与料を支払った者(=長男・次男・長女等の相続人)
 相続人が支払った特別寄与料は、その者の相続税の課税価格の計算上、債務として控除されます(相法13④)。


 主な課税上の留意点には以下のものがあります。
①基礎控除及び法定相続分
特別寄与者は、法定相続人ではないので、基礎控除のうち法定相続人数比例部分(600万円)の適用はありません。また、相続税の総額を計算する際の法定相続分もありません。

②2割加算
特別寄与者は、配偶者又は一親等の血族以外の者であることから、原則として相続税額が2割加算されます。

③3年内贈与加算
特別寄与者は、遺贈により財産を取得したとみなさるので、被相続人からその相続開始前3年以内に贈与を受けた財産があるときには、特別寄与料に贈与を受けた財産の贈与の時の価額が加算され、相続税の課税価格が計算されます。

 こうしたことから、結果的に相当な額の相続税が課税され、全体で見ると税負担が重くなることもありえます。特に、長男の妻が相続開始前3年以内に結構な額の生前贈与をしてもらっている場合において、相続発生後に特別寄与料を受け取るときには、切り離せると思っていた3年分の生前贈与が相続財産に加算され、想定外の課税が発生し、特別寄与料の手取り額が少なくなってしまうことがあるので、事前に慎重な検討が必要です。

2021年2月5日 (担当:後 宏治)

ページトップへ