2020年5月27日

非営利型一般法人の安易な利用には要注意

 非営利型の一般社団法人や一般財団法人は、受贈益課税されないという利点から、近年相続対策などで利用が増加していましたが、このような安易な利用に警鐘を鳴らす注目すべき裁決が出ています。

 自らを非営利型であるため、収益事業以外の事業収入は法人税課税の対象外と主張した一般社団法人に対して、国税不服審判所は2019年5月7日、会員等が本来負担すべき共済掛金等を一般社団法人が負担し、また、会員等に対して敬老祝金を交付することは、社会通念上相当なものとは認められず、非営利型法人の要件である「特定の個人又は団体に特別の利益を与えないこと(法令3三)」を充足しないため、非営利型法人に該当しないと判断しました。

 ここで驚くべきはその金額感です。2018年6月8日付朝日新聞デジタルによると、一般社団法人が申告対象外とした国からの地代収入は年間数億円とのことです。これに対して、一般社団法人が負担した共済掛金等は一人当たり約1,100円~約20,500円であり、敬老祝金は一人当たり1~3万円に過ぎません。法人税基本通達1-8-8には、「特別の利益を与えること」とは、資産の無償譲渡等で社会通念上不相当なものをいうとされていますが、具体的な判断基準はなく、一般社団法人としてもまさかこの程度の会員福利厚生で非営利型が否認されるとは思わなかったことでしょう。

 既に設立・運営している非営利型の一般法人の支出についても、それが「特定の個人又は団体に対する特別の利益」に該当しないか、見直してみる必要がありそうです。

2020年5月27日 (担当:平野和俊)


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