2020年2月14日

相続登記未了の不動産を登記したときの相続税の取り扱い

 大きな社会問題になっている所有者不明土地の対策として、相続登記の申請が義務化される見通しとなっています。

 先日法制審議会から公表された「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案」では、不動産の所有権の登記名義人が死亡した場合には、その不動産を相続により取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の取得の事実を知った日から一定の期間内に、その不動産についての相続による所有権の移転の登記を申請しなければならないとされ、正当な理由なくその申請をしなかったときは、一定の額の過料が科されるという改正案が提言されています。

 2020年秋の臨時国会での法案提出が予定されており、改正法が成立した場合、施行日後に開始した相続から相続登記が義務化されることとなります。

 気になるのは、施行日前にすでに相続登記未了となっている不動産の取り扱いです。

 この点、中間試案は、施行時に所有権の登記名義人が既に死亡している不動産については、引き続き検討するとしていますが、そのままにしておいて良いということにはならないようです。というのも、試案の補足説明において、施行後一定期間は新ルールの適用を留保し、また、数次相続が発生しているケースについては登記申請をすべき期間をより長期間のものとする案が明らかにされているからです。

 いずれにせよ、相続登記未了の不動産については、遅かれ早かれ、登記申請が義務とされるのは間違いありません。

 それでは、今まで放っておいた相続登記を新たにした場合、相続税の課税上の取り扱いはどのようになるのでしょうか。

 これは、先代名義のまま相続登記未了となっている不動産が、現時点において、①分割協議が成立するなどで分割が確定しているのか、②分割協議が不調のまま未分割となっているのか、により課税関係が異なります。

 ①の分割が確定している場合には、その不動産の取得者が登記申請を行い自己の名義に変更することが原則です。

 相続税の申告を既にしていれば、登記したことによる追加の納税は発生しません。仮に、相続税が課税される場合であったにもかかわらず申告をしていなかったとしても、税務上の時効期間(原則として申告期限から5年、偽りその他不正の行為がある場合には7年)が経過していれば、相続税の課税がなされることはありません。ただし、相続登記に際し、相続人で再度分割協議を行って取得者を変更すると、相続人間の贈与があったとして贈与税が課税されることとなるので注意が必要です。

 ②の未分割の場合には、現存する相続人の間で分割協議を行い、相続登記することになります。未登記の状態が長期間に渡り数次の相続を経ていると、相続人を確定する作業だけでも大変です。

 相続税については、未分割遺産の分割に伴い、新たに相続税の申告書を提出すべき要件に該当することとなった人は、期限後申告書を提出することができます。既に相続税が課税されている場合において、相続税額に不足を生じたときは、修正申告を、また相続税額が過大となったときは、協議による分割があった日の翌日から4ヶ月以内に限り、更正の請求をすることができます。税務上の時効期間が経過していれば、特に課税が生じないのは①の場合と同様です。

 なお、登記名義人の死亡が昭和22年5月2日以前だと明治民法が適用され、家督相続によって相続が確定したこととなり、②の未分割の場合には該当しないので、このようなときには再度の分割協議はできません。

 相続登記未了の不動産をお持ちの方は、今後の法改正に注目です。

2020年2月14日 (担当:後 宏治)

ページトップへ