2019年7月16日

中央出版創業者親族に対する相続税申告漏れ指摘の根拠は?

 教育関連事業を手がける「中央出版」の創業者(2014年死去)から非上場株式を相続した長男が、名古屋国税局の税務調査を受け、その株式評価を巡って約100億円の申告漏れを指摘されたと報じられました(2019年6月24日日本経済新聞電子版、2019年6月25日朝日新聞デジタル)。

 長男は財産評価基本通達に則って1株当たり18円(記事によると類似業種比準価額により評価したと推測される。)と評価して相続税申告したところ、名古屋国税局は過去の同社株の取引価格などから「通達以外の方法によって価値を算定すべき特別な事情がある」と判断して、第三者機関の鑑定に基づき1株当たり55円(最終的には再調査請求に基づき45円)と評価したと記事にあります。

 これらの記事以外の情報がないため、現時点で「特別な事情」の内容が分かりかねますが、非上場株式の相続税評価に当たって、その相続税評価額が過去の取引価格と乖離があるからと言って、伝家の宝刀である総則6項(この通達に定めにより難い場合の評価)が発動されることには違和感があります。例えば、個人が法人に非上場株式を譲渡する場合における時価は所得税基本通達59-6などにより評価されるところ、これらの評価額は相続税評価額よりも高くなる傾向がありますので、相続税評価額が過去の取引価格と乖離することはむしろ通常です。

 中央出版と言えば2014年に最高裁棄却で納税者敗訴が確定した「中央出版事件(信託受益権の孫へのみなし贈与)」の記憶が新しいところですが、過去のいきさつが今回の課税処分に影響したところがあるのでしょうか?

2019年7月16日 (担当:平野和俊)

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