2018年4月 9日

ハワイの不動産を譲渡した場合の外国税額控除

 日本の居住者がハワイに所有している不動産を譲渡した場合には、米国の連邦税として譲渡対価の15%及びハワイの州税として譲渡対価の5%が源泉徴収されます。

 なお、この源泉徴収された税額は、日本で確定申告を行う際に、外国税額控除の計算対象となるため、ハワイの不動産を譲渡した年分の確定申告において、譲渡所得を計算すると共に、源泉徴収税額を外国所得税の額として外国税額控除を計算します。

 例えば、居住者の所得総額が下記の場合の源泉徴収税額、外国税額控除、外国税額控除後の所得税額は次のようになります(以下、単位:円)。

<所得総額>
 国内源泉所得:70,000,000
 譲渡所得(ハワイ不動産):譲渡対価40,000,000-取得費15,000,000=25,000,000
 所得総額:95,000,000
<源泉徴収税額>
 40,000,000×15%(連邦税)+40,000,000×5%(ハワイ州税)=8,000,000
<外国税額控除前の所得税額(所得税のみ)>
 70,000,000×45%-4,796,000+25,000,000×15%(長期譲渡)=30,454,000
<外国税額控除(所得税のみ)>
 ① 外国所得税額:8,000,000
 ② 控除限度額:30,454,000×25,000,000÷95,000,000=8,014,210
 ③ ①<② ∴ 8,000,000
<外国税額控除後の所得税額(所得税のみ)>
 30,454,000-8,000,000=22,454,000

 ところが、譲渡年の翌年に米国申告で計算された外国所得税の額が、譲渡益25,000,000×約30%(連邦税+ハワイ州税)=7,500,000だとすると、譲渡年において実際の納税額よりも高い金額の源泉徴収税額で外国税額控除が計算されていることになります。これでは、過大控除です。そこで、居住者が外国税額控除の適用を受けた年の翌年以後7年内の各年において外国所得税の額が減額された場合には、譲渡年に遡及して減額することなく、減額年で次のような調整をします。

(ケース1)
 減額年において納付する外国所得税の額(A)≧減額された外国所得税の額(B)
 ・A-Bの金額について外国税額控除を適用
(ケース2)
 (A)+減額年の前年以前3年内の各年の控除限度超過額(C)≧(B)
 ・(A+C)-Bの金額について外国税額控除を適用
(ケース3)
 (B)>(A)+(C)
 ・B-(A+C)の金額は雑所得の総収入金額に算入

 つまり、上記具体例の場合ではケース3に該当し、B(8,000,000-7,500,000)-(A(0)+C(0))=500,000が雑所得になります。

 ちなみに、源泉徴収税額は外国所得税の額に含まれないと勘違いをして、下記のように、確定した税額をもって、申告年で外国税額控除を計算したり、譲渡年に遡及して外国所得税額を減額して計算したりすると、雑所得500,000の計上はないものの、外国税額控除が500,000少なくなってしまいます。

<仮に申告年で外国税額控除を計算した場合>
① 外国所得税額:7,500,000
② 繰越控除限度額:8,014,210(譲渡年からの繰越分)
③ ①<② ∴ 7,500,000

<仮に譲渡年に遡及して外国税額控除を計算した場合>
① 外国所得税額:8,000,000→7,500,000(遡及して減額)
② 控除限度額:8,014,210 
③ ①<② ∴ 7,500,000

 外国税額控除は外国所得税を納付することとなる日の属する年分において適用することとされており、納付することとなる日とは、納付すべき租税債務が確定した日とされています。源泉徴収税額の租税債務確定について具体的な規定はありませんが、課税実務上は源泉徴収の対象となった対価の支払日が租税債務確定日として取り扱われております。

 また、源泉徴収税額で外国税額控除を計算した後に外国所得税の額が減額となった場合には、現行制度ではケース3のように納税者にとって有利になっておりますので、くれぐれも、源泉徴収された年に外国税額控除の適用を忘れないように注意しましょう。

2018年4月9日 (担当:桑田洋崇)

 

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