2018年2月 7日

新事業承継税制適用の第一歩は承継計画書の提出から

 平成30年度税制改正で、事業承継税制が大幅に拡充され、新制度として誕生します。既存制度と比較して、大きく変わるのは次の点です。

①雇用8割維持要件の実質的な撤廃
 既存制度では、5年間で平均8割以上の雇用を維持できなければ猶予が打ち切りになります。中小企業においては、5年間の業績維持も難しく、人手不足の中、この要件が最大の障害となり、多くの経営者が適用を躊躇していました。新制度では、雇用要件を満たせなかった場合でも、一定の書面による報告等をすれば納税猶予が継続可能になり、この要件は実質的に撤廃されることになりました。

②猶予額の上限拡大
 今までは、納税猶予の対象となる株式数には2/3の上限があり、相続税の猶予割合が80%であったため、最大で約53.4%までしか相続税が猶予されず、後継者がこの制度を適用しても相続発生時には多額の税負担が生じていました。今後は、猶予額の上限が100%に拡大され、相続発生時の税負担はゼロになりました。

 大幅に有利になりほぼ欠点がなくなった新事業承継税制の適用を受けるための手続きの流れは、既存制度とほとんど変わりません。異なるのは、新制度は10年間の時限措置となっていることと、事業承継計画(計画書)(=法律では「特例承継計画(計画書)」と呼称されます。)を作成して都道府県に提出することが最初に必要とされることです。

 特例承継計画書の記載内容は、先代経営者の氏名、後継者の氏名、将来の事業計画等くらいのもので、非常に簡易になることが予定されています。

 ただし、事業承継への早期取り組みを促すため、この計画書の提出が認められるのは平成35年3月31日までの5年間に限定されています。そんな短期間で承継計画などを作ることはできないと不安になる経営者も多いかもしれませんが、その心配は無用です。

 計画書の提出はあくまで早期の承継準備を促すための要件にすぎず、ラフなもので十分です。後継者や事業計画が変更された場合には内容を変更して再提出すればよく、それを出したからといって当初の計画に拘束されることはありません。結果的に10年内に贈与・相続がなかったとしてもデメリットは何もありませんし、計画提出時期と実際の事業承継の時期が何年ずれていても問題ありません。ただし、5年経過後に再提出が認められるのは、当初の5年内に特例承継計画書を提出している場合に限られます。

 以上のことから、これから事業承継をむかえる会社は、どんな会社でも、とりあえず5年内に特例承継計画を都道府県に提出し認定を受けることが大切になります。提出することによる不利益はまったくなく、有利な新制度適用の権利だけは手に入れることができるからです。

 事業承継時の税負担の軽減を望んでいる経営者にとって、10年間限定のチャンス到来です。早めに承継計画の作成・提出に取り組み、まずは権利を確保しておくことが重要です。

 なお、この計画は、認定経営革新等支援機関(弊法人も認定されています。)の指導及び助言を受けることが必要要件となっています。ご関心のある経営者の方は、何はともあれ認定経営革新等支援機関に相談等されることをおすすめします。

2018年2月7日 (担当:後 宏治)

ページトップへ