2009年11月25日

平成22年度税制改正で対処?
~自動販売機を使った賃貸マンションの取得に係る消費税還付スキーム~

会計検査院が平成21年11月11日に提出した平成20年度決算検査報告に、掲題のスキームを防止するための措置を講ずる旨の意見 ※1が盛り込まれました。

スキームの概要(課税期間は暦年とします。)は下記のとおりです。

X年 ①課税事業者を選択し、かつ、②自動販売機の設置などにより課税売上割合を95%以上とした上で、賃貸マンション等を建築・取得
⇒ 賃貸マンション等の取得に係る消費税額が全額還付される
X+1年 この年中に、①課税事業者選択不適用届出書、または、②簡易課税制度選択届出書を提出
X+2年 X+1年の届出により、①免税事業者、または、②簡易課税制度の適用を受ける事業者となっているため、「課税売上割合が著しく変動した場合の調整対象固定資産に関する仕入れに係る消費税額の調整」の規定(消費税法第33条。以下「調整規定」という。)の適用がない。
 ⇒ X年において還付された消費税額についての調整計算・納付が不要

会計検査院は、「賃貸マンション等の取得に係る消費税額を仕入税額控除していない事業者や消費税額の調整を行っている事業者との間で公平性が著しく損なわ」れている事態は改善を必要とするとし、「消費税額の調整を含めた仕入税額控除制度を有効に機能させ、公平性を高める必要がある。ついては、貴省において、賃貸マンション等の取得に係る消費税額のうち非課税売上げである家賃収入に対応する部分の額が、国に適切に納付されることとなるための措置を講ずるよう意見を表示する。」としています。

このスキームへの対処、財務省の平成22年度税制改正要望事項一覧にあがっておらず、動向が注目されていましたが、平成21年11月17日に開催された税制調査会の配布資料「資料(要望にない項目等)」※2 において、「対処を行う」と明言されました。平成22年度の税制改正に盛り込まれる可能性は、かなり高いと考えられます。

会計検査院の指摘や税制調査会資料を参考にし、現行の制度をなるべく変えず、かつ、このスキームとは無関係な納税義務者への影響を極力抑えるという前提にたつと、

課税事業者を選択し、または資本金1,000万円以上の新設法人の特例により課税事業者とされた場合で、100万円以上の固定資産の課税仕入れを行ったときは、3年間(現行の制度では2年間)は免税事業者となることはできず、その間は簡易課税制度の選択も不可能とする。

といった法改正により、必ず「調整規定」の適用を受けるようにするという対処が予想されますが、このスキームへの対処のために、納税義務者に原則課税を3年間強いることには問題があるようにも思われます。

このスキームへの対処方法は、当初、11月18日の税制調査会で審議される予定でしたが、時間切れで審議が行われず、現在のところ11月26日に審議されることとなっています ※3。実務家としては、今後の動向に引き続き注目する必要がありそうです。

1

※1 http://www.jbaudit.go.jp/report/summary20/iken05.html
全文は、http://www.jbaudit.go.jp/pr/media/kensa/kensa21/pdf/211020_zenbun-2.pdf

※2 http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/pdf/21zen8kai3-1.pdf
http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/pdf/21zen9kai16-3.pdf

※3 http://www.cao.go.jp/zei-cho/chukei/chukei.htmlの平成21年度第9回税制調査会審議中継より。


2009年11月25日 (担当 吉岡 純男)

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