2007年10月25日

不動産流動化スキームに与える信託損失の影響

平成19年度税制改正で、信託法の改正に伴い、法人が受益者である場合の信託損失の損金算入に関する制限規定が設けられました。具体的には、法人が受益者である信託が受益者等課税信託に該当する場合で、「①受益者が直接に信託債務を負担するものでない場合」には、信託損失のうち調整信託金額を超過する部分が損金不算入となりました。また、「②信託財産に帰せられる損益が実質的に欠損とならないと見込まれる場合」には、信託損失が全額損金不算入となりました。

不動産流動化における不動産信託については、受益者等課税信託に該当し、かつ①に該当するため、信託損失のうち調整信託金額を超過する部分は損金不算入となります。また、信託財産に帰せられる損益が明らかに欠損とならないと見込まれるような損失補てん等契約を締結することなども想定されないため、②には該当せず、信託損失の全額が損金不算入となることはないと考えられます。

具体的に損金不算入となる金額については、信託損失及び調整信託金額の概念を把握することが必要です。信託損失は、信託に係る損金の額が益金の額を超える場合のその超える部分の金額をいいます。調整信託金額は当初・追加信託金額に、信託損益に係る利益積立金額を加算し、信託財産から給付を受けた金額を減算した金額です。つまり、信託財産の税務上の簿価純資産額と考えられます。現行の流動化実務において、調整信託金額を割り込むほどの信託損失が発生するということは、おおよそ考えられないため、流動化実務に与える影響はなさそうです。

しかし、調整信託金額のうち、信託不動産の金額は「信託直前の帳簿価額」との規定があります。不動産流動化において、受益権を譲渡するスキームではなく、受託者が債務を引き受けるスキームが活用されるようになった場合において、当該不動産及び対応する債務を信託したが、圧縮記帳等により不動産の税務上の帳簿価額が低いときには、調整信託金額を超える信託損失が発生する場合も想定されるため、注意が必要です。

2007年10月25日(担当:川村 崇)

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